▮はじめに
あまり聞きなれないかもしれませんが、小脳梗塞や脊髄小脳変性症などと呼ばれる疾患があります。
小脳系の疾患になると、あらゆる動きが上手くいきません。
かなり大変な病気ですが、案外知られていないのが現状ですので、この記事では小脳の役割や機能について書いていきます。
【要約】 ・小脳は神経細胞が多い部位である。 ・小脳の役割は、①協調性 ②予測 ③適応性である。 ・小脳障がいの症状は、①運動失調 ②高次脳機能障害など多岐にわたる。 ・小脳が障がいされると運動学習に支障がでる。運動学習は繰りかえし事象を行うことで誤差を埋めていく作業である。 ・運動学習には音楽が有効化もしれない。
▮小脳とは
小脳とは脳幹の後方に位置する器官(下写真)で神経細胞が豊富です。
ちなみに大脳の神経細胞数が100億に対し、小脳の神経細胞数が
▮小脳の役割について
実は小脳の役割はあまり知られていませんが、主に以下の3つが役
①運動の協調性
小脳は大脳の運動野と大脳基底核群とともに協調運動に寄与して
協調運動とは言い換えると運動の微調整です。よって、小脳が障害
②予測
多くの動作は全て無意識で行われますが、実は色々な要素を予測しながら行われています。その予測の機能
③適応性
小脳が障害されると伸張反射が亢進すると言われています。
伸張反射とは脊髄で行われるもので無意識レベルのものです。
これが亢進してしまうと、動きがうまくいきません。
例えばふくらはぎの伸張反射が亢進すると歩く際、かかとが常に浮
一般的に①〜③は、繰り返しによる学習の結果、獲得されると言われていま
▮小脳が障がいされた時にみられる症状
▮運動失調
四肢、体幹、発声、眼の揺れ(震え)が起こります。
これは小脳症状で有名な症状ですが、小脳以外の障害でも運動失調は
●小脳性 ●脊髄性 静止時および運動時ともに動揺が起こるのが特徴であり、特に下肢に運動失調が著明です。 また、閉眼時に揺れが強くなる傾向にあります。 ●前庭性( 迷路性 ) 体位変換時に起こる 反射的運動の障害が主な症状であり、四肢単独による随 意運動障害はみられません。 また、閉眼時のふらつきが著明で、さらに一側性の障害の場合は片側に傾く傾向にあります。 ●大脳性(前頭葉性) 様々な症状がみられます。
▮高次脳機能障害
小脳の障がいで、
・遂行機能
・言語機能
・視空間認知機能
・人格
などに障がいをもたらすことが報告されてます。
その理由としては、大脳-小脳連関という用語ありますが、大脳と小脳に神経のつながりがあるということが挙げられます。
つまり、小脳で障がいが起きると大脳の症状に影響が出たり、大脳で障がいが起きると小脳の症状に影響が出たりするので、いろいろな症状が出る可能性があるということです。
▮小脳症状に対してどうすれば良い?
運動失調に対する昔から提唱さているものは、
・フレンケル体操
・重錘負荷
・弾性包帯による圧迫
などが有名です。これらを行う際は、しっかり個人を評価した上で使用することが大事になります。
次から私が個人的に行っているものをご紹介します。
①運動学習
小脳の3つの機能を高める為には、事象を繰り返し行しますが、その中で誤差
・誤差学習
・教師あり学習
といいます。
ちなみに認知神経リハビリテーションという流派では、会話を通じてこの誤差を徹底して埋めていく作業を行います。
小脳を障がいすると運動学習の効果が出にくいため、新しい動作より昔からなじみのある動作を行うのが良いです。
②体幹トレーニング
体幹トレーニングというと少し抽象的ですが、四つ這いで腕や足を挙げるのは良いと考えています。
また、バランスクッションに座って足挙げなどを行う運動は良いと考えています。
③リズミカルな感覚を入力する
これは、聴覚、前頭葉、小脳が音により同期すると言われおり、運動学習効果に音楽が有効だという報告もあります。
リズムのテンポは速すぎず遅すぎずが良いと思いますが、あくまで対象者の状態や好みに合わせるのがポイントかと思います。
※参考文献
▮おわりに
以上、小脳の記事でした。
小脳が割と重要な部位というのが伝われば幸いです。
当サロンでも小脳疾患で苦しんでいる方をお見受けしますが、この記事を見て頂きその方々に少しでも参考になれば幸いです。
※慢性期の脳卒中リハビリに関するnote➔こちら
※執筆者のサロンはこちら➔https://www.reha-me.com/
【参考文献】
・三苫 博,小脳症候の病態生理.2009
・後藤淳,運動失調に対するアプローと.2014
・森岡周,脳神経科学入門