▮はじめに
ドーパミンという物質を聞いたことある人は多いと思います。パーキンソン病の原因物質でもあることで有名ですね。
また、ドーパミンは幸せホルモンとかよく言われていますが、実際ドーパミンの働きは多様です。
少し専門用語が多くなり難しい表現も出てくると思いますが、今回はドーパミンの役割について解説していきます。
【要約】
・ドーパミンは加齢とともに減少する。
・運動調整、記憶・学習、動機付けなど様々な働きがあります。
・減少するとパーキンソン病のような疾患、増えすぎると精神疾患や依存症になりうる。
・有酸素運動、不確かな結果・新しい刺激などで増やすことができる。
▮ドーパミンとは
ドーパミンはドパミンともいわれていますが、ここではドーパミンに統一します。
一般的に、加齢に伴い前頭葉・海馬・帯状回の脳内血流は低下し、40歳ころからドパミン作動性ニューロンは減少すると言われています(畑澤順ら,RADIOISOTOPES,1995)。
有名な役割は脳内の神経伝達物質の役割ですが、それ以外に末梢神経でも役割があるとされています。
以下に中枢神経系(脳、脳幹)と末梢神経系における役割を記載します。
①中枢神経系における役割
受容体がD1~D5の5種類あり、各々が分布場所が異なります。
・D1受容体:線条体、側坐核、臭結節に分布
・D2受容体:黒質、線条体、腹側被蓋野、側坐核、下垂体後葉に分布
・D3受容体:黒質、臭結節、側坐核に分布
・D4受容体:前頭葉、扁桃体、中脳に分布
・D5受容体:海馬、線条体、視床下部、視床に分布
線条体は全ドパミン量の80%を含むと言われています。
②末梢神経系のおける役割
末梢神経はD1,D2の受容体があるとされています。
・D1 受容体:血管平滑筋に存在し、腎臓をはじめとする内臓の血管を拡張させる作用
→腎臓などの内臓の血管拡張を起こすことにより血圧を低下させる。
・D2受容体:交感神経からのノルアドレナリンや副交感神経からのアセチルコリンの遊離を抑制するシナプス前受容体として働く
→心拍出量増やす、血圧上昇させるなど。
次にドーパミンの役割について解説します。
▮ドーパミンの役割(働き)について
冒頭に書いたようにドーパミンの働きは多様ですが、ここではいくつかをご紹介します。
①運動調節
運動開始時に大脳基底核が重要な役割をしているのがそれに関与。
②動機づけ
報酬に動機づけられた目標志向行動に線条体、前頭眼窩野、島皮質が関与、報酬の獲得を伴わない動機づけ行動は線条体、前頭眼窩野、島皮質、前頭前野、前帯状回が関与。
③記憶・学習
記憶・学習の過程に関連した神経活動を調節している。
④覚醒促進作用
ドーパミンが大量に放出されると覚醒が促進される。
⑤摂食制御作用
ドーパミンが減少すると食欲減衰する。
⑥快感や多幸感を得る
▮基底核障害の病気
ドーパミンは線条体に多く分布していますが、その線条体と黒質は大脳基底核と呼ばれる部位です。
そのに関連する有名な病気が以下のものになります。
①パーキンソン病
ドーパミン不足にしょる神経変性疾患。基底核障害で最も多い病気で、特に50~60代の発症が多いと言われています(詳細は割愛)。
②ハンチントン病
ドーパミン中年以降に発症する疾患で、一年以内で運動の異常を認め、不器用になり、平衡感覚が障害され、全般的に落ち着きがなくなります。
③統合失調症
ドーパミン過剰による精神疾患。覚せい剤として知られるアンフェタミンの乱用が誘因となって引き起こされることがあります。
④依存症(薬物、アルコールなど)
ドーパミン過剰による疾患で、有名なものは薬物やアルコールがありますが、スマホ依存やギャンブル依存などもこれに含まれます。
▮ドーパミンの増やし方について
ドーパミンが減るとパーキンソン病のような症状(動きにくさ、覚えにくさ、不幸せ感など)が出てきますが、どのようにするとドーパミンが増えるかという報告が多々あります。以下に箇条書きします。
・有酸素運動(※)
・褒められる
・不確かな結果を得る、新しい刺激を得る(『スマホ脳』より)
・ドパミン原料のチロシンを含む食品の摂取(乳製品、大豆など)
▮おわりに
ドーパミンは減りすぎるとパーキンソン病、増えすぎると精神疾患や依存症のような身体への影響が多いい化学物質ということです。
普通に生活していれば加齢とともに減少してくるので、高齢者は増やし方を頭に入れておくと良いと思います。逆に若者は様々な依存症にならないように気を付けたいところです。
【参考文献】
・枝川義邦・渡邉丈夫,早稲田大学高等研究所紀要 第 2号
・市之瀬敏晴・山方恒宏,比較生理生化学,2017
・畑澤順ら,RADIOISOTOPES,1995
・アンデシュ・ハンセン、スマホ脳、2020