医療情報関係

認知症に関する日本の政策のまとめ

はじめに

認知症患者は年々増加傾向におり、2025年に700万人にも達すると予想されています(厚生労働省HPより)。
我が国は認知症に対する政策をうっていますが、一般の人には全く伝わっていない印象です。

この記事では認知症に関して日本で取り組んでいる内容について共有したいと思います。記事は簡略しているため、詳しく知りたい方はリンク先の一次情報をご覧ください。

【要約】
・令和5年に共生社会の実現を推進するための認知症基本法が成立。主に人権の尊重と予防をうたっている。
・認知症施策推進大綱を現在進行形で行っている。
・新薬レカネマブが令和5年12月に発売された。

認知症に関する取り組みの歴史

まずは日本の認知症に対する取り組みの主なものを下記に示します。

平成16年 痴呆から認知症に名称変更
平成17年 認知症サポーター養成講座開始
平成27年 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
平成30年 認知症施策推進関係閣僚会議
令和元年 認知症施策推進大綱
令和5年 G7長崎保健大臣宣言
令和5年 共生社会の実現を推進するための認知症基本成立

今のところこんな流れです。
最新の通称認知症基本法は後程解説しますが、まずは令和元年の認知症施策大綱は現在につながっているためその説明をします。

認知症施策推進大綱について

以下の5つを柱とし、共生予防を両輪を基本理念としたもので、令和7年までに行うものとなっています。

①普及啓発・本人発信支援
認知症サポーター養成の促進、地域包括支援センターや認知症疾患医療センターの周知の強化、認知症本人からの発信機会を設けるなど

②予防
発症予防、早期発見、重症化予防

③医療・ケア・介護サービス・介護者への支援
従事者に対する認知症研修、BPSDガイドライン作成、認知症カフェの実施など

④認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援
ハード面とソフト面からバリアフリー化推進、成年後見制度推進、虐待防止施策推進、社会参加支援など

⑤研究開発、産業促進、国際展開
認知症薬の治験をスムーズに行えるようなコホートの構築認知症予防・治療に関するデータベース化など

次に最新の認知症に関する法案についての説明をします。

共生社会の実現を推進するための認知症基本法

認知症患者を個人としての人権を尊重し自らの意思で生活することや、認知症予防のための施策を定めるための法律で基本施策が8つあります。

①【認知症の人に関する国民の理解の増進等】
国民が共生社会の実現の推進のために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深められるようにする施策

②【認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進】
・ 認知症の人が自立して、かつ、安心して他の人々と共に暮らすことのできる安全な地域作りの推進のための施策
・ 認知症の人が自立した日常生活・社会生活を営むことができるようにするための施策

【認知症の人の社会参加の機会の確保等】
・ 認知症の人が生きがいや希望を持って暮らすことができるようにするための施策
・ 若年性認知症の人(65歳未満で認知症となった者)その他の認知症の人の意欲及び能力に応じた雇用の継続、円滑な就職等に資する施策

④【認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護】
認知症の人の意思決定の適切な支援及び権利利益の保護を図るための施策

【保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備等】
・ 認知症の人がその居住する地域にかかわらず等しくその状況に応じた適切な医療を受けることができるための施策
・ 認知症の人に対し良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスを適時にかつ切れ目なく提供するための施策
・ 個々の認知症の人の状況に応じた良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるための施策

【相談体制の整備等】
・ 認知症の人又は家族等からの各種の相談に対し、個々の認知症の人の状況又は家族等の状況にそれぞれ配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするために必要な体制の整備
・ 認知症の人又は家族等が孤立することがないようにするための施策

⑦【研究等の推進等】
・ 認知症の本態解明、予防、診断及び治療並びにリハビリテーション及び介護方法等の基礎研究及び臨床研究、成果の普及 等
・ 認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすための社会参加の在り方、他の人々と支え合いながら共生できる社会環境の整備等の調査研究、成果の活用 等

⑧【認知症の予防等】
・ 希望する者が科学的知見に基づく予防に取り組むことができるようにするための施策
・ 早期発見、早期診断及び早期対応の推進のための施策
※ その他認知症施策の策定に必要な調査の実施、多様な主体の連携、地方公共団体に対する支援、国際協力

次に認知症に関する薬の歴について解説します。

認知症薬に関する歴史

・承認:平成11年 アリセプト(エーザイ株式会社):飲み薬
・承認:平成23年 レミニール(ヤンセンファーマと武田薬品工業株式会社):飲み薬
        イクセロンパッチ(ノバルティスファーマ):貼り薬
        メマリー(第一三共):飲み薬
・承認:令和5年 レカネマブ(エーザイ株式会社):点滴静脈注射

○レカネマブ
2週間に一度点滴を行うタイプの薬で、アルツハイマー病による認知症が軽度である時期、およびアルツハイマー病による軽度認知障害の方が治療対象となります(厚生労働省HPより)。

令和5年12月20日に発売された新薬のため令和6年2月時点ではまだ受けられる病院は少ないと思われますが、東京都健康長寿医療センターが受診の受付を開始したとのことで、今後増えていくと思われます。

今後の流れ

認知症に関する今後の流れは内閣官房のホームページから抜粋します。

今後も認知症に対する社会の認知度向上や従事者に対する研鑽、認知症対策への投資は続いていくと思われます。
超高齢社会の我が国では認知症を社会全体で支えるしくみを構築していく必要がありますし、自分や自分の親もいつなるか分からないので他人事と思わず自分事としてアンテナをはっていく事をお勧めします。

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