リハビリテーション関係

膝関節のスクリューホームムーブメントについて

はじめに

膝関節は大腿骨と下腿骨と膝蓋骨で構成される関節ですが、痛みの発生や変形する関節として整形外科領域でよく出てくる関節です。
この記事では膝関節の動きの障害として有名なスクリューホームムーブメントについて解説します。

【要約】
・スクリューホームムーブメント(SHM)は膝関節完全伸展付近か完全伸展まで下腿外旋が起きる運動である。
・これは骨形態と靭帯が影響している。
・SHMが出現しなかった場合は原因を推定する。
・下腿外旋筋の筋力低下、下腿内旋筋の柔軟性低下が原因でSHMが出現しないことがある。
・健常者でのSHMが出現せず内旋するケースもある。

スクリューホームムーブメントについて

スクリューホームムーブメントとは、日本語では終末強制回旋運動(Screw-Home Movement,以下 SHM))といい、膝関節を伸ばす際に完全伸展の手前(-30度辺り)から完全伸展に動きにつれて下腿が10~15度外旋する運動を言います。

変形性膝関節症が重度の人はSHMが減少すると言われています(長尾憲孝ら,日本リウマチ・関節外科学会雑誌.1997)。つまり、SHMが出現するかどうかを見ることは膝関節の機能障害を見るうえで重要な一つの要素だといえます。

ところで、なぜSHMが出現するのでしょうか?
これは骨形態と靭帯が影響していると言われています。次に膝関節の骨形態と靭帯の話をします。

膝関節の構造について

膝は安定しているように見える関節ですが、適合性が悪く骨だけでは不安定な関節です。
よって、靭帯、関節包、半月板、筋肉への負担が大きくなる関節とも言えます。

◆大腿骨の構造
大腿骨内側顆の関節面は、顆間溝に接近するにつれ大腿骨の中心部へ向かい約30度の角度を持って曲がっていると言われています。

◆脛骨の構造
大腿骨の膝関節付近の構造は丸みを帯びており、脛骨の膝関節付近の構造は少し変わっています。

脛骨の内側は凹しており、やや安定性がありますが、脛骨の外側はやや凸しており、不安定で可動性に富んでいます。


※左が外側、右が内側

◆膝関節の靭帯
大腿骨と下腿骨を走行する主な靭帯は前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯となります。

骨形態とこれらの靭帯の走行がSHMを誘導していると言われています

スクリューホームムーブメントの評価

座位か臥位で膝を伸展していき、下腿が外旋するかをみます。この時に膝関節伸展筋の内側広筋と外側広筋を触診し、それらの筋肉の働きを確認しておくと良いと思います。

また、立位でスクワットをして膝が伸展時に外旋するかもみておくと良いです。

ちなみに座位では出現して立位で出現しない、というケースもありますが、その場合は膝関節以外の要因が考えられますが今回は割愛します。

スクリューホームムーブメントが適切に出現しなかった場合、神経、筋肉、靭帯、骨の問題が考えられますが、ここでは筋肉をピックアップして解説します。
まずは下腿を回旋させる主な筋肉を挙げます。

◆下腿を外旋する筋肉
大腿二頭筋(外側ハムストリングス)、腸脛靭帯

◆下腿を内旋する筋肉
膝窩筋、半膜様筋・半腱様筋(内側ハムストリングス)、縫工筋、薄筋

SHMが出現しない原因として筋肉の視点で考えられるのは、下腿を外旋する筋の筋力低下下腿を内旋する筋の柔軟性低下です。

おわりに

以上、膝関節のスクリューホームムーブメントの記事でした。
膝関節伸展運動時に通常は下腿の外旋運動が出現しますが、健常者でも下腿外旋が出ないケースもあります。

石井らの報告によると、健常者でも膝関節最終伸展での外旋運動が内旋運動になっているケースがあり、その多くが女性で靭帯が緩かったとのことです(石井慎一郎ら,理学療法科学.2008)。
このことから、SHMの有無が膝の痛みに直結しないといえます。また、膝の痛みや変形がなくても膝のSHMをみておくことは予防的観点かもみても有益かもしれません。

※写真は全てVisible Body ヒューマン・アナトミー・アトラスより引用

 

 

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