▮はじめに
皮膚は脳と同じ外肺葉由来の器官のため大変多くの役割があると言われており、リハビリテーションでも皮膚の重要性が強調されています。皮膚は身体で占める割合も多く体重の6分の1ともいわれていることから身体にとっても重要だと思われます。
今回は皮膚の構造、役割、リハビリの応用について解説していきます。
【要約】
・皮膚の構造は3層構造となっている。
・皮膚の役割は6つあるが、触ることで起こる間接的な役割もある。
・皮膚の役割や動きを考慮することでセラピーとして利用できる
▮皮膚の構造
皮膚を拡大すると以下のような表皮、真皮、皮下組織の3層構造になります(イラストはmaruhoのHPより引用)。
また、表皮を拡大するとその下のような構造になり、角質、顆粒層、有棘層、基底層の4層になります。
一番外側にある角質は水分を多く含んでいます。刺激から自らを守る役割、細菌や紫外線からの防御、水やその他物質の体内への侵入を防ぐといった重要な役割があります。
真皮は大部分を占めるコラーゲンやエラスチンなどにより、肌(皮膚)を支えその形や弾力を保つ働きがあります。 さらに「血管」「リンパ管」「皮脂腺」「汗腺」があり、「マイスネル小体」「パチニ小体」のような受容器もあります。
皮下組織の大部分は脂肪で、クッションの役割をして外部からの刺激や衝撃をやわらげたり、熱を伝えにくいという性質から断熱・保温の働きをしたりします。
▮皮膚の役割
①保護作用
表皮での外部刺激からの保護
②吸収作用
真皮のコラーゲン、エラスチン線維、皮下組織の脂肪による吸収
③分泌排泄作用
発汗と老廃物の排泄
④知覚作用
神経終末、受容器による知覚(触覚、痛覚、温度覚など)
⑤体温調節作用
熱いときは発汗による体温低下、寒いときは体温を逃がしにくくする
⑥表現作用
精神的な変化が皮膚に現れること
また、皮膚の間接的な作用としては毛根に巻き付いているC触覚線維が発火すると視床下部からオキシトシンが分泌され、ストレス抑制作用、鎮痛作用、脂肪を燃焼させる作用 、骨密度を高める作用 、免疫の活性化 、皮膚のバリア機能を高める作用などがあるといわれています(山口創,日本香粧品学会誌,2022)。
▮リハビリテーションへの応用
①触り方
皮膚の作用のC触覚線維の発火を意識する触り方がポイントとなります。山口創先生の文献によると、秒速3~10秒くらいの速度で皮膚を触るとC触覚線維が発火しやすいとのことなので、ゆっくりすぎず早すぎずに触るのがポイントですね。
②皮膚の動き
福井勉先生による皮膚運動学という書籍を参考にすると皺が寄らない方向に皮膚は動くので、その動きを誘導することで関節の動きが促されます(福井勉,理学療法学,2011)。
③キネシオテーピング
キネシオテーピングの考え方で皮膚を持ち上げてできたスペースを間質液やリンパ液が流れることで滞留した熱を冷やし身体を正常の状態に近づける、というのがあります(キネシオテーピングHPより)。
この考え方を応用すると皮膚の動きが悪い部分を改善することで関節の動きの改善や体内循環の改善につながると考えます。
▮おわりに
最後までお読みいただきありがとうございます。
皮膚はセラピーとして唯一直接触れる器官ですし人体最大の臓器とも言われている通り、私はセラピーを行う際とても重要視しています。参考になれば幸いです。