医療情報関係

便秘・排便コントロールの基礎と改善策について

はじめに

日々高齢者をみていると便秘の人が大変多いと感じます。また、慢性の腰痛や肩こりの人の中にも便秘で悩まれている人も少なくありません。

そこで今回は便秘・排便コントロールについての基礎と改善策について述べていきます。

【要約】
・便秘は65歳以上では好発する症状である。
・便秘になると心血管疾患などのリスクが高まる。
・内分泌疾患、神経疾患などになると便秘になりやすい。
・治療は食生活改善、薬物、その他がある。

便秘とは

定義は「本来なら体外に排出すべき糞便を十分かつ快適に排出できない状態」とされています(慢性便秘症診療ガイドライン2017)。診断基準は以下の通りです。

便秘の人の割合は加齢とともに増加傾向がみられ、65歳以上の高齢者では男性 65%、女性が 80.5%となります。やや女性で多い傾向がありますが、80歳以上は男女差はないようです。

(結束 貴臣ら,日WOCM 会誌 27 巻 1 号,2023)

便秘による悪影響について

便秘は死亡リスクを高めると言われています。主なものは以下の通り。

①心血管疾患
排便時にいきむことで血圧上昇を起こし脳出血、クモ膜下出血などを起こすと言われています。

②腎臓病
疫学調査で慢性便秘が慢性腎臓病(CKD)のリスク因子であることが明らかにされてきてます。

③消化管閉塞、直腸潰瘍、消化管穿孔

④栄養失調
便秘になると食欲低下を起こす人が多いため結果に栄養失調になりやすいと言われています。

便秘を起こしやすい疾患

以下の疾患になると便秘になりやすいため、治療には疾患に対するものを行っていく必要があります。

  • 内分泌・代謝疾患:糖尿病、甲状腺機能低下症、慢性腎不全
  • 神経疾患:脳血管疾患、パーキンソン病、脊髄損傷など
  • 膠原病:強皮症、皮膚筋炎
  • 精神疾患:うつ病、心気症
  • 大腸の疾患:痔核,炎症性腸疾患,直腸脱,直腸瘤,骨盤臓器脱,大腸腫瘍による閉塞など

疾患によるものだけでなく薬の副作用で便秘になることもありますので、薬が変わったときや薬の量が変わったときに便秘が見られた場合は主治医と相談すると良いです。

便秘の治療と対策

便秘の治療は外科的治療と保存的治療がありますが、ここでは保存的治療を述べていきます。

①食生活の改善
プロバイオティクスが便秘の改善に良いといわれていますが、プロバイオティクスとは人の体内に自然に存在する微生物と同じ、または類似の生きた微生物(例:細菌)で、乳酸菌ビフィズス菌が代表的なものです。

また、腸内細菌の善玉菌が増えやすく働きやすい環境に整える役目をするもの(プレバイオティクス)も便秘の改善には重要で、オリゴ糖食物繊維が重要と言われています。

また、水分量が少ないと便秘になりやすいことから水分摂取量を増やすことも必要です。

②薬物療法
薬の第一選択浸透圧性下剤ですが、これは水分を腸管内に移動されて便を柔らかくする作用のある薬です。
例)酸化マグネシウム(マグミット他)、糖類下剤のラクツロース(モニラック他)、浸潤性下剤のジオクチルソジウムスルホサクシネート

同時に刺激性下剤を使用することもあります。これは、大腸を直接動かして排便を促す薬です。
例)アローゼン、プルゼニド、ラキソベロン

上記の薬は昔からありますが、比較的新しい便秘の薬として、粘膜上皮機能変容薬胆汁酸トランスポーター阻害薬があります。

また整腸剤を飲むことがあると思いますが、下痢症状では効果があるという報告がありますが、便秘では改善したという報告はあまりないのが現状です。

③その他
お腹のマッサージ:お臍から「の」の字を書いて右下→右上→左上→左下とさすります。
腹式呼吸:吸うときお腹をふくらまして吐く時お腹をへこませます。
ストレッチ:体をひねるストレッチを行い腸に刺激をいれます。
ウォーキング:歩くことで腸の動きを促します。
排便時、前かがみになる:お腹の圧を高めると排便を促せます。

(EAファーマより)

おわりに

以上、便秘・排便コントロールについての記事となります。たかが便秘、されど便秘です。便秘を軽視せず便秘になっている原因を追究しそれに対する治療を行っていく事が重要ですね。

【参考文献】
慢性便秘症診療ガイドライン2017
・結束 貴臣ら,日WOCM 会誌 27 巻 1 号,2023
・福土審ら,日内会誌 108,2019

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