医療情報関係

運動により疼痛が緩和する~exercise-induced hypoalgesia~

はじめに

疼痛は急性痛と慢性痛(3か月以上継続する痛み)に分けられますが、運動により慢性痛が緩和すると言われていることもあり慢性痛の人に対しては運動療法が活用されています。

今回は、運動により痛みが緩和するシステムについて簡単に解説します。

運動による疼痛抑制効果

運動による疼痛緩和効果は exercise-induced hypoalgesiaと言われEIHと略されます。
運動中または運動後に主観的な疼痛強度の減少および痛覚閾値や耐性値の増加(痛みが感じにくくなる)を特徴とします。

■メカニズム
EIHのメカニズムははっきりと解明されているとは言えませんがいくつか説を紹介します。

①ランナーズハイと同じような現象
・さまざまな鎮痛物質の侵害受容ニューロン受容体結合による伝達ブロック(松原貴子.日顎誌.2020)

②ドパミン-報酬系への影響
・自発運動は側坐核外側shellへ投射する扁桃体基底核内側部のglutamateニューロンの活性化を高め、神経障害性疼痛に伴い増加した扁桃体中心核のGABAニューロンの活性化を抑制した。
・自発運動は文脈性恐怖条件づけと恐怖記憶の再現に関与する腹側海馬CA1の錐体細胞の活性化を劇的に抑制した。
(上勝也ら.整形・災害外科.2021)
➡上記のことから、自発運動によりドパミン分泌を促す可能性があるといえます。

■運動療法による疼痛軽減の効果
いくつか研究報告があるので紹介します。

①健常人に対して25%最大収縮力の等尺性収縮運動による手の把握運動を 1 分間負荷すると,手指の圧痛閾値が上昇した(Umeda M.et al.Biol Psychol. 2010;)。

②健常人に対して 75%最大酸素摂取量の有酸素運動によるトレッドミル走行を 30 分間負荷すると手指の圧痛に対する主観的疼痛強度が低下した (Hoffman.et al.Arch Phys Med Rehabil. 2004)。

③健常人対して 75%最大収縮力によるベンチプレスを10 回×3 セット45 分間負荷すると手指の圧痛閾値の上昇が見られた(Koltyn KF, A. Br J Sports Med. 1998)。

有酸素運動や筋力強化を行うことで疼痛を感じにくくなるという報告が多数みられています。

おわりに

慢性痛に対しては多角的(色々な面から)に見ていきアプローチしていく必要がありますが、運動療法はその一つとしてとても有効かと思います。
また、生活習慣病予防にもありますし、ストレス軽減にもつながりますので痛みのある人もない人も運動習慣を身につけることは良いと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です