▓ はじめに
がん患者さんを見ていると、足の痺れの訴えをする方が多くいます。これは抗がん剤による副作用によって現れているタイプの痺れの可能性があります。
今回はこのタイプの足の痺れのリハビリテーションについての記事となります。
【要約】 ・CIPNは抗がん剤により神経障害な症状が起こる。 ・CIPNにより転倒リスク増加が見られる。 ・運動によりCIPN重症度の低下、身体機能向上がみられる。
▓ CIPNとは
CIPNとは、chemotherapy induced peripheral neuropathyの略称で、日本語では化学療法誘発性末梢神経障害といいます。
以下に主な症状と薬剤について記載します。
■症状
- 感覚神経障害︰痺れ、痛み
- 運動神経障害:筋力低下、筋萎縮
- 自律神経障害︰便秘、発汗など
■CIPNが現れやすい薬剤
- 白金製剤:オキサリプラチン など
- オキサン系︰パクリタキセル など
- ビンカアルカロイド系:ビンクリスチン など
- プロテアソーム阻害薬︰ボルテゾミブ
(関口緑,神経治療38,2021)
▓ CIPNのリハビリテーション
動作的なものとCIPNとの関係は以下のことが報告されています。
- 歩幅の減少
- 歩隔の拡大
- 歩行速度の低下
- バランス能力低下
(Winters Stone KM,J Clin Oncol,2017)
そして転倒リスクが増加するとも言われています。
感覚神経障害、運動神経障害によりこれらの事が起こるのは予想できますね。
CIPNが運動によって改善するかどうかというと、2022年に出されたレビュー(Megan Crichon et al,Nutrients,2017)によると、運動によりCIPNの重症度の低下、身体機能向上が認められるが、十分なエビデンスには至っていないとのことです。
▓ おわりに
私の経験則としては運動により足の痺れが緩和する人が多いですが、完全に取り切れず残存している人が多いです。
しかし、運動により残存機能を高めて転倒リスクを低下させたり、生活習慣病予防や悪化予防になるため身体には有用かと思います