リハビリテーション関係

高齢者で好発する椎体骨折(脊椎圧迫骨折)について

はじめに

高齢者化が年々進む我が国ですが、高齢者でも健康寿命をいかに延ばし要介護状態にならないようにするかがポイントになります。
その要介護状態になる原因として12.5%が転倒を占めます(平成30年版高齢社会白書(全体版)より)。

その転倒で多いものの一つに椎体骨折(脊椎圧迫骨折)となります。椎体骨折は骨粗しょう症との関連が強い骨折ですが、今回はその骨折に関する疫学やリスク因子について書いていきます。

【要約】
・椎体骨折は高齢者に好発する骨折で再発率が高いため、再発しなような対応が必要。
・椎体骨折の症状は体動字の痛みと骨折部位の痛みが主です。
・再発予防としては、骨密度を高める、転倒予防する、生活動作に注意する、です

椎体骨折とは

椎体骨折と脊椎圧迫骨折は同意語です。この記事では椎体骨折と書いていきます。

▮疫学
近年の報告をみると,10 年間の椎体骨折の累積発生率は 60 歳代男性で 5.1%、女性で 14%,70 歳代男
性で 10.8%、女性で 22.2%です(参考文献①)。

▮病態
下の写真のように脊椎(背骨)の椎体という土台の部分がつぶれる骨折で、程度や場所によってグレード0~4に分かれています。

日本骨代謝学会,椎体骨折評価基準(2012年)より

骨折でも新鮮骨折と陳旧性骨折があり、X線では判断困難な不顕性骨折と呼ばれる骨折もあります。また、遷延治癒
・ 偽 関 節 3 6 ヵ月以上経過しても骨癒合が得られていない場合に用いられる。

▮症状
・体動時の痛み
・骨折椎体レベ
ルの圧痛,叩打痛
・脊柱管狭窄症や脊髄麻痺(まれ)

上記の3つが主な症状ですが、体動は脊椎が動くような寝返りや起き上がり動作で痛みが出現することが多いです。

また、骨折後の変形に伴う合併症として、
逆流性食道炎
・呼吸機能
低下
・起居動作、歩行動作、身辺作業動作能力低下
などが挙げられます(参考文献①)。

▮治療
治療は主に保存療法となりますが、程度に応じて外科療法をすることもあります。

保存療法局所の安静、体幹ギプス固定、コルセット装着による外固定、鎮痛薬投与
外科療法椎体形成術など

椎体骨折のリスク因子と再発予防について

既存の椎体骨折が存在する場合、新規椎体骨折の相対リスクは約4倍といわれています(参考文献①)。
予防のためにも再発呼ぼうのためにも骨密度はキーポイントとなります。

骨密度が低い状態を骨粗しょう症と呼ばれますが、一般住民での 40 歳以上の骨粗鬆症の有病率は、腰椎L2 L4 で男性 3.4%、女性 19.2%という報告があります。加齢とともに骨粗鬆症の割合は増加していきますので、高齢者ほど骨密度は低くなります。

▮椎体骨折再発予防
椎体骨折予防&再発予防に関しては以下の3つがメインかと思います。

・骨密度を高める
・転倒予防
・生活動作

①骨密度を高める
・栄養面:ビタミンDカルシウム摂取参考文献①
・嗜好品:タバコ、飲酒は骨粗鬆症になりやすくなるので、なるべく控える参考文献①
・運動:ウォーキング、体幹筋力強化、背筋筋力強化、下肢筋力強化

②転倒予防
・リハビリテーション
・環境調整や福祉用具の活用

③生活動作
旭化成ファーマの冊子を引用させてもらいますが、体幹前傾位(円背)になるほど椎体骨折になりやすくなります


※旭化成ファーマ

体幹前傾位の状態で手を伸ばして物を取ろうとしたり、物を持つとさらに椎体にかかる負担が増えますので、骨折のリスクが高まります。
なるべく体幹前傾位を避けることが望ましいですが、現実的には以下の写真のような歩行車などの用具を使用して立ったり歩くことが再発予防として有効です。

おわりに

以上、椎体骨折に関する記事でした。
椎体骨折は安静にしていれば3~4週間で落ち着くと言われています(日本整形外科学会HPより)ので、知識をもって慌てずに対応するようにしましょう。また、再発率が高いので再発をしないことが大事です。そして、若い方は予防的な知見も頭に入れておくと良いと思います。

【参考文献】
①骨粗鬆症予防と治療ガイドライン2015
②日本骨代謝学会,椎体骨折評価基準2012
③旭化成ファーマ資料
④日本整形外科学会HP
⑤内閣府, 平成30年版高齢社会白書(全体版)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です