リハビリテーション関係

封入体筋炎とは?~リハビリテーション戦略について~

はじめに

世の中には難病と言われている治療方法が確立していない疾患がたくさんあります。
難病情報センターによると、令和4年6月時点では338疾患の難病指定された疾患がありますが、今回紹介する封入体筋炎もその一つになります。
罹患者が少ない疾患ですが、病気に関することとリハビリテーションに関する情報を記載させていただきます。

【要約】
・封入体筋炎は性進行性の筋疾患で、右非対称の筋力低下と筋萎縮が大腿四頭筋や手指・手首屈筋にみられる。
・罹患期間が長引くほど歩行能力が低下するが、運動すると歩行機能が向上すと言われている。
・リハビリテーションは転倒予防と誤嚥予防がメインとなる。

封入体筋炎とは

封入体筋炎は主に 50 歳以上で発症す性進行性の筋疾患で、右非対称の筋力低下と筋萎縮大腿四頭筋手指・手首屈に見られる疾患です。

▮疫学
日本には1000~1500人いるとされており、男女比は 1.2:1 やや男性の割合が多く初発年齢は平均 64.4 である。

▮症状
初発症状は階段上りの困難さなど下肢近位筋脱力の症状 74を占め、嚥下障害は23にみられたとの報告あり。前述したように筋力低下は主に大腿四頭筋と手指・手首屈筋にみられる。

▮経過
・しゃがみ立ち不能が発症後 4.6
・ペットボトルの開栓不能が 6.6
・洗顔不能が
7.2

・車椅子が 7.3
・電動車椅子が
13.7年

一般集団と比較して平均寿命に有意差はなかったが、60 歳以降に発症した患者は 60歳以前に発症した患者に比べて死亡リスクが高かったとのこです。
北米の 916 例の患者へのアンケート調査による横断的研究では、患者の平均年齢は 70.4 歳、男女比は 2:1 で初発症状出現から診断までの平均期間は 4.7 年でした。

また、歩行機能やADL は年齢や罹病期間と負の相関があり、運動とは正の相関があった。
つまり、罹患期間が長引くほど歩行能力が低下するが、運動すると歩行機能が向上するということです。

封入体筋炎のリハビリテーションとは

身体機能低下を予防することで①転倒予防、②誤嚥予防がリハビリテーションの介入目的となります。
理由は転倒による骨折、誤嚥による肺炎をきっかけにADLレベルが低下し衰弱していくことが多いためです。

①転倒予防
前述したように運動は有効です。
レジスタンストレーニング(筋トレ)に関しては、最大筋力の50-80%の負荷をかけたとき
CK 上昇(炎症反応)などの副作用はなく安全性は高いと考えられています。

②誤嚥予防
咽頭収縮筋の筋力低下輪状咽頭筋の開大障害舌骨挙上障害があると言われているため、これらの筋力強化を実施します。

おわりに

以上、封入体筋炎に関する記事でした。
なかなか出会わない疾患かと思いますが、もしこの疾患に出会ったとき、もしくは自身や知り合いが罹患した際に参考にしていただければ幸いです。

【参考文献】
・難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/
・封入体筋炎 診療の手引き:日本神経学会、2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/syounin_02.pdf

封入体筋炎とは?~リハビリテーション戦略について~”への1件のコメント

  1. 封入体筋炎患者を担当する脳神経内科医の方へお願い致します。
    治療が可能になるまでは、侵された筋肉の周辺筋肉をしっかり鍛えて、歩行機能を維持する「筋肉の代償作用」に関する知識を習得願います。

    いまだに、侵された筋肉と侵されていない筋肉を混同して、「60パーセント、70パーセント強度での筋トレ」を推奨などと解説の例がありますが、これは明らかに間違いです。

    侵された筋肉への負荷は極力抑え、侵された筋肉の筋力を補助する周辺筋肉はしっかり鍛える必要があります。

    いわゆる筋肉の代償作用ですが、この理屈を是非封入体筋炎患者に対して指導すべきです。

    https://m.facebook.com/story.php/?vanity=100004216982078&story_fbid=1950652228418658

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