リハビリテーション関係

【広背筋】~論文紹介と臨床所見の紹介~

はじめに

広背筋は背中の表面に広範囲に走行する筋肉です。一見とても大きそうな筋肉に見えますが、体積は上肢でいうと三角筋>上腕三頭筋>大胸筋に次いで四番目に大きい筋肉です(Holzbaur KR,2007)。

つまり大きい割には薄い筋肉だと思われます。
私は日々色々な症状の方を見ていますが、どんな症状の方でも広背筋は見ることが多いです。
そんな広背筋についての記事を書いてみましたので、よろしければご覧ください。

【要約】
・広背筋は働きが多様である(肩、体幹、肩甲帯、骨盤)。
・広背筋は上部と下部で働きが変わる。
・広背筋は引っ張る系(プル)で活動が高まりやすい。

広背筋の解剖学的所見

起始:腸骨稜後面、仙骨背面、第6胸椎〜第5腰椎棘突起、肩甲骨下部
停止:上腕骨小結節稜
働き
肩関節伸展・内転・内旋・水平伸展
体幹伸展・回旋
肩甲帯下制
骨盤挙上
支配神経:胸背神経(Th6,7,8)

広背筋の筋電図所見

1972年という古い論文ですが、広背筋の働きについてわかりやすい研究報告があるので紹介します。

上記の写真の部位に広背筋に6か所の電極を貼付した筋電図の研究(伊東元ら,1976)によると、

肩関過伸展時部(①~③)められ部(④~⑥)ではそれべてな活 した。
骨盤挙上時下部に著明な活動が認めれ、上部はそれに比べて小さな活動を示した。
抵抗を加えた肩関節伸展 ・内転 ・内旋時、①~⑥の電極(上部、下部)が同程度の活動を示した。
抵抗を加えない肩関節伸展 ・内転 ・内旋時、①~⑥の電極はほとんど活動を示さなかった

という結果になったそうです。つまり、上部は肩関節の運動、下部は骨盤の運動で活動が高いといえます。
ちなにみ、抵抗を加えない肩関節の伸展・内転・内旋時でも活動が全くないわけではなく、活動がわずかだったという意味で解釈していいと思います。

また、半田らの報告()によると下の1~5の運動の中で、3,4,5が広背筋の活動が大きいとのことです。


※1:直立位でバーベルを下から持ち上げる、2:体幹前傾位でバーベルをお腹まで持ち上げる、3:長坐位で手前に引っ張る、4:座って上から胸に引っ張って下す、5:4の動作を背中側に下す

ちなみに論文によると1と2は僧帽筋の活動が高かったようです。
この論文の結果から考えると、広背筋は重力に抗して持ち上げる系の運動より引っ張る系の運動で働きやすいと言えるかもしれません。

おわりに

広背筋は身体内で唯一上肢、脊柱、骨盤にまたぐ筋肉なので、上肢、体幹、下肢全ての動きに影響すると推察できます。
ちなみにアナトミートレインでも後機能線というのがありますが、背部の安定性にも関与していると思われます(記事:後機能線を診よう)。
アプローチとしては広背筋の筋緊張が亢進しているとき、筋力が低下している時など色々あると思いますが、それに応じてストレッチや筋トレなどを行っていくことが必要ですね。

今回は個人的に重要視している広背筋を取り挙げて記事にしましたが、参考にしていただければ幸いです。

【参考文献】
・Holzbaur KR,2007(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17241636/)
・伊東元ら,臨床理学療法,1976(https://www.jstage.jst.go.jp/article/rinsyorigaku/3/1/3_KJ00001525346/_pdf/-char/ja
・半田徹ら,体力医学,2005(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/54/2/54_2_159/_pdf/-char/ja)

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