▮はじめに
私は下戸ですので、アルコールとは無縁の生活をしています。
しかし、世の中にはアルコールを毎日飲んでいる人が多数おります。
国税庁の調査(☆)によると、毎日飲酒する人の割合は年齢共に増加し60代以上では約5割になります。
「アルコールは身体にいい」
と言い切り、鼻高々飲んでいる人もいますが、本当にそうなのでしょうか?
今回は、アルコールの起源から始まり、2018年に発表されたアルコールの論文を中心に記事を書いていきます。もしよろしければ最後までお読みいただけると幸いです。
【要約】 ・1998年、1999年に少量の飲酒が冠動脈疾患や脳卒中リスクを下げるとう報告があった。 ・大量の飲酒は様々な健康被害があることが認識されていた。 ・2018年の大規模な研究報告によると、アルコールゼロが最も健康被害がない。そしてアルコールはがんのリスクを高めると述べている。 ・新型コロナをきっかけに飲酒量が増えている人もいるので要注意。
▮アルコールの歴史
ワインは6000年前にヨーロッパで、3000年前にエジプトで始まったとされており、ビールは5000年前にワインと同様にヨーロッパで始まり、その後イギリスやベルギーに伝わったそうです。
ワイン、ビールに続いて蒸留酒が登場し、11世紀初めごろ南イタリアの医師が医薬用として使用していたそうです。
日本では、奈良時代に集団の儀礼の中にあって、神人と民衆との交流の場での群飲がほとんどで、一部上流階級の人が飲むものでした。
鎌倉時代から一般人も飲むようになり、江戸時代にはワイン、ビール、ウイスキーなどの洋酒が日本に入ってきたそうです。
という感じでアルコールの簡単な歴史はこのくらいにしておき、実際にアルコールは身体によいのか?という本題に移ります。
▮アルコールが身体によいと言われていた
1998年に投稿された論文(☆)による、「軽・中程度の飲酒と比較して、非飲酒者の方が冠動脈心疾患と総死亡のリスクが高い」という内容と、1999年に投稿された論文(☆)による、「中等度(コップ2杯程度)のアルコール摂取は、多民族の都市部の高齢者において、虚血性脳卒中リスクの低下と独立して関連していた」という報告が、少量のアルコールが身体に良いという解釈のきっかけになった可能性があります。
しかし、大量の飲酒が身体に良くないという報告が圧倒的に多いです。
肝臓疾患、すい臓病、メタボリックシンドローム、うつ、認知症、がん、痛風、消化器疾患、歯科疾患、糖尿病などの生活習慣病から精神疾患に至るまで幅広いリスクがあります。
さらに妊婦でいえば、胎児・乳児に対し、低体重や顔面を中心とする形態異常、脳障害などを引き起こす可能性があるともいわれています。
▮アルコールは少量でも身体に良くない?
上記のように少量のアルコールは身体に良いという認識がありましたが、2018年に投稿された世界195カ国で実施された大規模な論文(☆)によると、「アルコールは、世界的な疾病負担の主要な危険因子であり、実質的な健康損失を引き起こす。我々は、全死亡、特に癌のリスクは、消費量の増加とともに上昇し、健康損失を最小化する消費量はゼロであることを発見した」と報告されています。
アルコールはあらゆる疾病のリスク因子となり、特にがんのリスクを高めるそうです。そして、飲まないことが最も健康に良いと結論付けています。
アルコール好きの人は自分に都合の良い報告を耳に入れがちですが、がんになりたくなければ飲まないのが一番ですね。
▮新型コロナとアルコールの関係
新型コロナでのパンデミックにおいて、「アルコール使用障害を有する人における過剰なアルコール摂取の影響と、有害な飲酒、アルコール使用障害、離脱症状、親密なパートナーからの暴力、子どもへの危害、自殺、精神衛生上の問題および非伝染性疾患の有病率の潜在的な増加に関連している。」という報告があります(☆)。
また、ポーランドの研究(☆)ですが、「新型コロナの流行により17.4%は飲酒量が減少し、13.8%は増加したと回答した。元々飲酒量が多い傾向にある者は、流行下において以前よりも飲酒量が増加しストレスとうまく付き合うことが困難な傾向にあった。」という報告もあります。
上記のことから、新型コロナウイルスのリモートワークにより飲酒生活に変化がある人が一定数いると思われます。
よって、アルコールによる健康被害や社会的被害は今後増える可能性がありますので経過を見ていく必要があります。
▮おわりに
以上、アルコールに関する記事でした。
冒頭でも述べたように私は飲まないですが、周囲の人や関わっている人の中で飲酒が日課になっている人は多いので、この辺の知識は頭に入れておきたいと思っています。
読者の方も少しでも参考になれば幸いです。
【参考文献、参考サイト】
・国税庁:お酒に関するアンケートの集計:https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/sake/topic/ques/tpc-freq.htm
・アルコール健康医学協会:お酒と文化:http://www.arukenkyo.or.jp/culture/index.html
・PMID: 9778595) et al,1999(
・