医療情報関係

脳卒中の血圧管理

はじめに

脳卒中にとって高血圧は最大のリスク因子と言われており、血圧が高い人ほどリスクが高いとされています。
よって、脳卒中の予防のためにも再発防止のためにも血圧管理は重要になります。

今回は脳卒中の血圧管理についてガイドラインの内容から抜粋して説明していきたいと思います。

【要約】
・脳卒中の急性期は血圧が上昇するが、脳梗塞は安易に下げないように注意。
・脳梗塞、脳出血、急性期、慢性期で目標の血圧が異なる。
・血圧管理のために薬物療法は診察室での血圧、持病、生活習慣などを考慮して決定する。

脳卒中の血圧管理

脳卒中の急性期は脳梗塞、脳出血ともに血圧が上昇します。これは発症によるストレス、尿閉、頭痛などによるものだけでなく、虚血部位へ血圧を維持するために代償作用ともいわれています(参考文献③)。

脳梗塞は降圧によって病巣部およびその周辺のペナンブラ領域(血流の回復により機能回復が期待できる可逆性障害の領域)の増大をきたすリスクがあり、血管拡張作用を有する薬物は健常部の血管のみを拡張し、病巣部の血流は逆に減少するため、降圧には注意を要します。

脳梗塞、脳出血で血圧管理の考え方が変わりますし、急性期と慢性期でも血圧管理の基準が変わるとされています。以下に脳梗塞と脳出血の血圧基準を示します。

脳梗塞超急性期で血栓溶解療法を行った患者では、治療後 24 時間以内は 180/105mmHg未満にコントロールする。脳出血急性期の血圧は、できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、このレベルを維持することを考慮してもよいが降圧に伴う腎機能障害に注意を要する。脳梗塞慢性期(発症 1ヵ月以降)では、130/ 80mmHg未満を降圧目標とする。両側頸動脈高度狭窄,脳主幹動脈閉塞を有する症例、また未評価の場合は特に下げすぎに注意し,140/ 90mmHg 未満を目標とする。脳出血慢性期では、130/ 80mmHg未満を目標とする。
 (参考文献①)

血圧管理に対する薬物療法

脳卒中診療ガイドラインによると、診察室での血圧が140/90mmHg以上を高血圧とし、※1 非薬物療法および降圧薬投与を開始する
よう強く勧められています(参考文献②)。

診察室での血圧が130/80mmHg以上で140/90mmHg未満の場合、※2 高リスク群では非薬物療法および降圧薬投与を開始し130/80mmHg未満を降圧目標とするよう強く勧められており、低リスク群では非薬物療法を開始し定期観察を行うよう強く勧められています(参考文献②)。

※1 食事療法、運動療法など。
※2 高リスク群とは、「脳心血管病既往、抗血栓薬服用中、糖尿病、蛋白尿のある慢性腎不全」のいずれか 1 つ、または「年齢(65歳以上)、男性、脂質異常症、喫煙」のうちの 3 つ以上がある場合などを指します。

降圧剤の選択としては、

・カルシウム拮抗薬
・利尿薬
・アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB

が強く勧められています(参考文献②)。
糖尿病慢性腎臓病、および発作性心房細動や心不全合併症例、左室肥大や左房拡大が明らかな症例などでは、ACE阻害薬ARBが勧められています。また、血圧変動性の点からはカルシウム拮抗薬が勧められています(参考文献②)。

おわりに

脳卒中と血圧管理は切っても切れない関係にありますので、予防と再発予防ともに知識として重要かと思い記事にさせて頂きました。
ガイドラインは定期的に更新されるため、新しい知見が入れば数値の変更はあり得ます。
また、基本的には血圧管理は主治医の指示になりますので、不安な方は主治医に相談されることをお勧めします。

 

【参考文献】
①高血圧診療ガイドライン2019
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_hp.pdf

②脳卒中診療ガイドライン2015
https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2015_tuiho2019_10.pdf

③桑島巌著『高血圧変わる常識変わらぬ非常識』,ライフサイエンス出版

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