リハビリテーション関係

脳卒中の早期リハビリテーションについて

はじめに

急性期の脳卒中に対しては、離床を含めた急性期リハを積極的に行うことで廃用症候群の合併が予防され脳の機能代償も促されると言う考え方が一般的になっていますが、この記事ではあえてこの考え方に偏らず脳卒中の早期介入に対して書いていきます。

【要約】
・脳卒中後、早期のリハビリテーションが推奨されている。
・発症早期のリハビリテーションの効果に疑問があるという報告もある
・早期リハビリテーションのやり方によって予後が変わる
・ラットを用いた実験だが、脳出血発症24時間以内の運動は慎重にしたほうが良いかもしれないという報告がある。

脳卒中早期リハビリテーションに関する報告

脳卒中治療ガイドライン2015 において急性期脳卒中に対するリハの施行が強く推奨されています。

しかし、あくまで高血糖、低栄養、痙攣発作、中枢性高体温、深部静脈血栓症、血圧の変動、不整脈、心不全、誤嚥、麻痺側の無菌性関節炎、褥瘡(床ずれ)、消化管出血、尿路感染症などの合併症に注意した上での推奨です。

ここでいくつか脳卒中の早期離床に関する別の報告を紹介します。


脳内出血・脳梗塞発症当日から座位・立位・歩行練習などを行うと機能予後は比較的良好であったが、発症後数日間以上安静臥床させた群との比較で再発・進行率には有意差はなかった
(前田真治,長澤 弘,平賀よしみ・他:発症当日からの脳内出血・脳梗塞リハビリテ ーション.リハビリテーション医学,1993)
 ↓
<私見>発症当日にリハビリテーションを開始しなくても再発率と進行率は変わらないということです。


約 2,000 人の急性期脳卒中患者を 

⚫︎発症後 24 時間以内の超急性期から離床を積極的に開始した群
⚫︎発症後 24 時間以上が経過してから開始した群

とに分けて両群間で予後を比較した結果、
発症3か月後における良好予後の達成率は、24 時間以上が経過してから離床を開始した群では 50%であったのに対して,超急性期に離床を開始した群では 46%にとどまっていたという報告があります。
(AVERT Trial Collaboration group. Lancet. 2015)
 ↓
<私見>①と同じで、24時間以内にリハビリを開始してもしなくても予後に差はあまりないということです。


②の結果を分析した結果、

・より早期に離床を開始したほうが予後良好
・急性期における離床回数が多いほうが予後良好
・急性期における1 日あたりの総離床時間が少ないほうが予後良好

という報告もあります。

(Julie Bernhardt et al. Neurology. 2016)

<私見>早期にリハビリを開始した場合もやり方によって予後が変わるということです。


脳出血を呈したラットを用いた実験ですが、非常に早い段階での運動は、神経細胞死の増加と炎症因子の部位特異的な変化により、運動機能障害の悪化と関連している可能性が示唆された。これらの結果は脳出血後24時間以内の運動の実施は慎重に行うべきであることを示した。
(Keigo Tamakoshi et al. Neurorehabil Neural Repair. 2021)
 ↓
<私見>脳出血に関しては早期の運動は慎重にした方が良いということです。

これらのことから言える事は、早期離床をすれば皆が良くなると言う訳ではないという事です。
はじめに書いたように合併症が各々ありますし、重症度も各々異なりますので、早期リハビリの際はバイタルサインをモニタリングしながら行う必要があります。

特に④の論文は動物実験レベルなので人間に当てはまるか不明ですが、早期の運動が悪化させる可能性が示唆されたことから慎重さが求められると思います。

おわりに

医師、看護師、セラピストなどの医療従事者は早期リハビリテーションを行うことによるメリットと、行わないことによるデメリットを天秤にかけて判断して行っています。
よって、人によっては早期にリハビリテーションをしない方が良いケースもあるということです。  
そして、病院で早期リハビリテーションをする際はリスク管理をしながら行なっているのでご安心下さい。

【参考文献】
・前田真治,長澤 弘,平賀よしみ・他:発症当日からの脳内出血・脳梗塞リハビリテ ーション.リハビリテーション医学,1993
・AVERT Trial Collaboration group. Lancet. 2015
・Julie Bernhardt et al. Neurology. 2016
・Keigo Tamakoshi et al. Neurorehabil Neural Repair. 2021
・脳卒中 理学療法診療ガイドライン
http://www.japanpt.or.jp/upload/jspt/obj/files/guideline/12_apoplexy.pdf

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