▮はじめに
脳の疾患(脳卒中、脳腫瘍など)は様々な症状が現れます。
これは障害された部位によってある程度法則はありますが、人によって症状が変わってきます。
この記事ではその理由などを脳内のつながりと絡めて話をしていきます。
【要約】 ・1次運動野からα運動ニューロンにいき、運動が起こる。 ・1次運動野は脳内のたくさんの部位から入力を受けている。 ・運動を微調整する大脳基底核、小脳もさまざまなつながりをもっている。 ・一つの部位が障害されると脳全体に影響がでる。 ・眼は運動にとって重要だが、眼も脳内にたくさんのつながりを持つ。
▮運動がどのように起こるのか?
運動というのは、大脳皮質の運動領域(1次運動野)から最終的に脊髄の前角のα運動ニューロンに伝達され動きが起こります。
基本的には片側の運動野は延髄で交叉して大半の神経が反対側の手足にいきます。
そして、この1次運動野には下の図のようにたくさんの連絡があります。
ちなみに運動前野、補足運動野、帯状皮質運動野を高次運動野といいます。
そして、運動野と感覚野(体性感覚野、連合野)は大脳皮質といいます。
視床、視床下部、大脳基底核は脳の内部にある神経です。
大脳皮質は下の図のように視床という感覚の中継地点を介して末梢の器官だけでなく、大脳基底核、小脳からの情報も入ってきます。大脳基底核と小脳は運動の調節に関わる重要な部位です。
大脳基底核は4つの神経のつながり(ループ)を持っています。
●筋骨格運動ループ 運動野・体性感覚野➔大脳基底核(被殻、淡蒼球、黒質)➔視床➔運動野 ●眼球運動ループ 前頭前野・頭頂連合野➔尾状核、淡蒼球、黒質➔視床➔前頭眼野、補足眼野 ●前頭前野ループ 皮質連合野➔尾状核、淡蒼球、黒質➔視床➔前頭前野、運動前野 ●辺縁系ループ 海馬・辺縁連合野➔腹側線条体、腹側淡蒼球、黒質➔視床➔帯状回前部
小脳は筋緊張をコントロールするためには2つの神経のつながりをもっています。
●運動ループ 運動野、補足運動野、運動前野➔橋核➔小脳➔視床➔運動野 ●認知ループ 前頭連合野➔橋核➔小脳➔視床➔前頭連合野
このように脳内にはたくさんのつながりがあり、その結果運動として現れているということです。
セラピストは脳の中を見ることはできないので、運動を見てその脳内のつながりを予測します。
▮脳が障害されるとどうなる?
脳の一部が障害されると、前述したような神経のつながりに支障が出ます。
よって、脳全体に影響が出るということです。
これは、電車で人身事故などがあると、遠くの路線にまで影響がでるのと似ています。
例)山手線で事故➔埼京線、中央線、京浜東北線などが送れる➔小田急線、京王線が混む
▮眼と前頭連合野、側頭葉とのつながり
眼は動くにあたってとても重要な因子となります。
これは閉眼して運動が成立しないことが多いことから容易に想像できると思います。
眼は下の図の世に脳内でつながりがあります。
これに加えて、前頭葉の前の方(前頭前野)と側頭葉とのつながりを持ちます。
前頭前野とは空間での関係や空間での動きに関与し、側頭葉とは物の意味や概念などの認識の関与しています。
▮おわりに
以上です。脳内が色々なつながりがあるのが分かって頂けたと思います。
ここで紹介したような神経のつながりだけでなく、他にもたくさんあります。
そして、神経のつながりは生きていく中でつくられていうのもがあるので、人によって神経のつながり方は多少変わります。
よって、脳血管の障害(脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など)は障害の場所によって症状が異なるのはもちろんですが、脳全体に影響し、人によって現れる症状が異なるということです。
少しでも参考になれば幸いです。