▮はじめに
姿勢が悪いと頭痛になる、腰痛になる、肩痛になる、などというのを聞いたことはないでしょうか?
ヒトの姿勢はそれぞれ異なりますが、症状が出る姿勢にはある程度傾向があります!
その一つが「頭部前方位姿勢(Forward head posture;FHP)です。
この記事では、FHPと様々な症状との関連を文献から考えてみたいと思います。
【要約】 ・頭部前方位姿勢は首回りの筋のアンバランスを生じている ・頭部前方位姿勢は緊張型頭痛に関連している ・頭部前方位姿勢は呼吸機能との関連がある
▮頭部前方位姿勢(以下、FHP)とは
FHPとは、以下のように頭部が胸部に対して前方に移動している姿勢を言います。
FHPとなる代表的な姿勢は以下のものとなります。
左は凹円背、右はSway back姿勢と呼ばれています。
※これらに関して詳しい記事はこちら➔Sway back記事
FHPは上部交叉性障害と呼ばれる筋肉のアンバランスがあると言われています。
・頚部前部・胸部後部➔弱化筋
・頚部後部・胸部前部➔短縮(緊張)筋
と言われています。
▮FHPとの関連因子
▮緊張型頭痛と関連あり(Fernández-de-Las-Peñas C,2007)
この文献では、緊張型頭痛の特徴として3つ挙げています。
1.僧帽筋上部線維、側頭筋、胸鎖乳突筋にトリガーポイントあり
2.FHPあり
3.首の可動域制限あり
補足ですが、片頭痛は僧帽筋上部線維、側頭筋、胸鎖乳突筋、後頭下筋群にトリガーポイントがあったという報告があります(Ferracini GN,2016)。
僧帽筋上部線維、側頭筋、胸鎖乳突筋は片頭痛、緊張型頭痛に共通しているんですね。
▮顎関節症と気道確保に関連あり(L Blum C,2019)
この文献では、FHPと顎関節症、FHPと気道確保に関連があると報告しています。
※顎関節症に関しては、この記事をご覧ください➔顎関節症・咬合の記事
気道確保に関してはとても面白い報告だと思いました。
緊急の気道確保時は、顎を上に挙げます。そうすると気道が通りやすくなります。
つまり、気道狭窄や呼吸困難などの状態ではFHPにして呼吸をしやすくしていると言えます(代償動作)。
▮下部胸郭拡張性低下により呼吸機能低下(Koseki T,2019)
この文献では、FHP姿勢はノーマル姿勢の人と比べると、下部胸郭の拡張性が低下しており、結果的に呼吸機能が低下していると報告しています。
L Blum Cの文献の結果と絡めて考えると、
・呼吸機能低下した➔FHPになった
・FHPになった➔呼吸機能低下した
と、どちらのパターンも考えられます。
▮頸椎の椎間孔が広がる(Awalt,1989)
古い文献ですが、FHP姿勢になると頸椎3番から胸椎1番までの脊髄から神経が出てくる孔が広がると述べられています。
つまり、頸椎のヘルニアなどがある方にとってはFHP姿勢をとることで痛みから逃避が出来ているとも言えます。
▮FHPに対するセルフケア
FHPの改善のための運動療法を一つ紹介したいと思います。
下の写真はうつぶせ姿勢で両前腕を床に接地させた姿勢(パピーーポジション)です。
その姿勢で顎を引く+肩甲骨を内側に寄せるを同時に行うと、頸部の後面が伸びます。
横になれない方は座位で、顎を引く+肩甲骨を内側に寄せる、を行っても良いです。ご参考までに。
▮おわりに
この記事では頭部前方位姿勢(FHP)について簡単に述べた上で、頭痛、顎関節症、呼吸機能、頸椎アライメントと関連があるという文献を紹介しました。
ちなみにSway backは頭痛だけでなく、腰痛、肩痛にも関連があると言われている為、幅を広げると、FHPは様々な痛みに影響している姿勢と言えます。
何か参考になれば幸いです。
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【参考文献】
・Fernández-de-Las-Peñas C,2007
・Ferracini GN,2016
・Koseki T,2019
・L Blum C,2019
・Awalt,1989