治療関係

腰椎前弯の役割と運動療法の紹介~腰痛、肩こり、膝痛などあらゆる症状で使える~

はじめに

背骨は人間に限らず脊椎動物にある骨ですが、その形状は生物ごとに異なります!
人間の背骨は、頸椎(7椎)、胸椎(12椎)、腰椎(5椎)、仙骨から構成されております。

腰が要」という言葉があるように、腰は身体の中心に位置します。
今回は腰椎に着目し、その中でも人間の特徴でもある腰椎前弯についての記事を書いていきます!
※ ちなみに他の哺乳類の腰椎は前弯しておりません。

【この記事の概略】
・腰椎前弯の役割は①衝撃吸収②適切な立位③重心移動④呼吸⑤インナーユニットに関わる。
・腰椎前弯が消失すると、首痛、膝痛、腰痛になりやすい・腰椎前弯をつくるのは大腰筋多裂筋が中心。
・腰椎前弯を維持するための運動を紹介します!

人間の腰椎前弯

腰椎は上の図のようにやや前弯(前に反っている状態)しており、その角度はおよそ45度と言われています!
ちなみに第5腰椎と仙骨をなす角度は、およそ40度と言われています(文献)。

お腹の中では、背骨は後弯しています。
赤ちゃんの時にまず首が座り(頸椎前弯)、次につかまり立ちを獲得するときに腰椎の前弯が現れ始めます。
そして、成人のような腰椎前弯は10歳でほぼ完成する(文献)と言われております。

冒頭に腰椎前弯は人間の特徴と書きましたが、二足歩行が完成するにつれて、上半身を支える為に腰椎が太くなり、前弯を形成することで衝撃を吸収することができるようになりました(文献)。

腰椎前弯の役割

以下の書籍より、ヒトの特徴は①直立立位②二足歩行が挙げられています。骨格の特徴としては、

①大後頭孔が真ん中
②腰椎前弯
③膝が伸展位
④足のアーチ構造
⑤骨盤の形
⑥胸郭の形

が挙げられています。
その中でも腰椎前弯は重要な要素を占めると考えています!

これは私見も含みますが、腰椎前弯の役割は以下のようなものが挙げられると思います。

①歩行時の衝撃吸収
②立位重心の正中化
③歩行時の重心移動
④呼吸機能の正常化
⑤インナーユニットの適正化

①歩行時の衝撃吸収
これは、書籍カパンディにも書いてありますが、弯曲が0の脊柱に比べて、弯曲が3か所ある脊柱は10倍も強度が変わると言われています!
衝撃吸収がされないと首や頭への衝撃が強くなり、首痛の原因にもなります。
それ程腰椎前弯は歩行には重要な機能となります!

 ②立位時の正中化
これは当たり前ですが、立位の重心が仙骨の前方辺りにあると言われていますが、腰椎の前弯が消失すると腰部が後方へ移動するため、結果的に上半身と膝を前方に移動させてバランスをとります。
腰椎前弯が消失すると、胸郭が挙がり下肢が伸びるような立位姿勢をとることが困難になります。

また、腰椎前弯の消失は、下図のような姿勢(股関節外旋位;ガニ股)になりやすい為、膝痛を引き起こす可能性があります。

また、二足歩行になって以来、下位腰椎は立位や歩行に際し体重の分力としての剪断力(ずれる力) に曝されることになりました。
これに抗して腰椎の 支持性を維持する組織(椎間板、椎間関節、各種靱帯、脊 柱起立筋)の疲労や加齢変化が腰痛の原因にもなります。

③歩行の重心移動
歩行時、脊柱は3次元で動きます。
下図を例にすると、胸椎が左回旋(右上肢前方振出)すると、腰椎が前弯しているとカップリングモーションが働き、腰椎は左回旋・右側屈し、腰椎の右側の椎間関節が圧迫(近づく)方向に動き、右下肢へ荷重されやすくなります!
文書ではとても分かりにくかもしれませんが...

・胸椎のカップリングモーション:側屈と回旋が同じ方向
・腰椎のカップリングモーション:側屈と回旋が逆方向(L5-S1は同じ方向)

④呼吸の正常化
腰椎が後弯すると呼吸機能が低下すると言われています(文献)。

つまり、腰椎の前弯があるほうが、呼吸機能が良好になると言えます。

⑤インナーユニットの正常化
インナーユニットは、横隔膜、骨盤底筋、腹横筋、多裂筋を指し、全ての動作の予備動作に関係しています(文献)。


そして、このインナーユニットの中を縦に通る筋肉が大腰筋で、腰椎前弯は大腰筋と多裂筋の協調運動により起こります。
また、大腰筋はインナーユニットの横隔膜と連結していると言われています。


大腰筋と反対側の多裂筋が協調します。

さらに、福井によると(文献)大腰筋の役割は、①股関節の制御能力、②股関節と腰椎の分離運動能力、と述べています。
間接的に腰椎前弯は股関節運動が関係すると言えます。

腰椎前弯の作り方

前項で述べたように腰椎前弯の作り方のポイントは、
①大腰筋(腸腰筋)と多裂筋の協調運動
②インナーユニットを促通する
③股関節と一緒に腰椎を動かす
です。

ここでは運動を3つ紹介しますが、腰椎後弯になると大腿四頭筋の筋力が低下したという報告(文献)があります。
また、過度の腰椎前弯は多裂筋の活動が低下するという報告(文献)もあります。

そこでポイントとしては背中(アウター)に力を入れすぎずに、適度な腰椎前弯を意識するとなります。

【運動① ボールを挟んで足踏み】

ボールを軽く挟みながら左右交互に足踏みをします。
ポイントは「腰椎前弯を保ちながら行う」ことです。

【運動② 座位で体幹前後屈運動】

上肢を前方に伸ばしながら行うとより背部の筋肉が働きやすくなります。
ポイントは「腰を反らしすぎない」ことです。


両足が浮かないようにします。
ポイントは「腰椎前弯と保持する」ことです。

【運動③ 仰向けでの骨盤前傾運動】

膝を立てて行います。股関節辺りを自分で触り意識をむけます。
下肢を動かさずに骨盤前傾+腰椎前弯運動を行います。
これは結構難しいかもしれませんがお試し下さい。

以上、腰椎前弯の役割についての記事となります。
少しでも参考になれば幸いです。

※執筆者のサロンはこちら➔https://www.reha-me.com

<参考文献>
●姿勢の評価と治療アプローチ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/27/2/27_119/_pdf/-char/ja

●高齢者の腰痛・脊椎疾患のみかたとプライマリ・ケア
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/47/2/47_2_127/_pdf/-char/ja

●人間の進化における直立二足歩行の光と影
http://amcor.asahikawa-med.ac.jp/modules/xoonips/download.php/f1201023.pdf?file_id=5729

変形性膝関節症と退行性腰椎疾患合併例(仮称:Knee-Spine syndrome)の実態調査
https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1408902563

●骨盤,脊柱アラインメントが胸郭可動性と呼吸機能に及ぼす影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/30/2/30_229/_pdf

●腰椎に対する運動療法
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/31/2/31_140/_pdf

●腰椎姿勢変化による大腰筋の役割
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yotsu1995/2/1/2_1_27/_pdf/-char/en

●大腰筋機能の臨床的考察
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/24/3/24_KJ00003422228/_pdf/-char/ja

●腰椎前弯条件の違いが下肢運動時における体幹筋の筋活動開始時期に及ぼす影響
https://ci.nii.ac.jp/naid/130005015767



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