▮はじめに
健康の定義は「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること。」としています(日本WHO協会より)。
ポイントは、肉体面だけではなく精神面と社会面を含めて考えるところだと思います。
対象者(利用者・患者)の多くも肉体面に意識が向いている人が多いですが、健康に関してはついつい肉体面に目が行きがちですね。
この記事では「肉体面の正常とはなんだろう?」という面から健康を紐解いていきたいと思います。
【記事の要約】 ・健康診断のデータの基準値は95%があてはまる平均値か、各学会の疫学調査の結果である ・健常人でも画像をとると関節変性や組織損傷をしている人がいる ・姿勢は左右非対称である ・交流機会が多い人は交流機会が少ない人に比べて、肉体面と精神面の健康が保たれやすい ・健康は肉体面より、精神面、社会面の方が重要かもしれない
▮健康診断の基準値について
検査データの基準値の求め方は以下の2通りあります。
①健常人のデータを集めてその結果の分布から求めたもの
※平均値から95%を含む範囲
②疫学調査をもとに各学会が定めたもの
つまり、健常人でも基準値外の人はいるということです。基準値から外れていたから病気という訳ではありません。
健康診断を機に不安が憎悪し体調を崩す人がいますが、健康診断はあくまで「きっかけ」ですので、やる意味は大いにありますが、全てではないといえます。
▮画像(レントゲン、CT)から正常を考える
▮背骨(Brinjikji W,2015)
以下の表のように椎間板突出や椎間関節変性は80代では多くの人にみられており、20代でもみられています。
▮肩関節
平均56歳の男性51対象➔腱板完全断裂13.7%、部分断裂35.3%(Girish,2011)
平均37歳の女性228対象➔腱板石灰化15.4%(Meroni R,2017)
▮膝関節(Culvenor AG,2018)
5397人の成人対象とした研究では以下のような報告があります。
・軟骨損傷:40歳以上は43%、40歳未満は11%
・半月板損傷:40歳以上は19%、40歳未満は4%
背骨、肩関節、膝関節を例にとってみても、健常人でも変形や損傷があることが分かります。
▮姿勢は左右対称か?
この問いの答えですが、姿勢に関しては左右非対称が正常と言えます。
・体幹は非対称である(Burwell RG,1983)(Grivas TB,2006) ・胸椎が右に回旋している(Kouwenhoven JW,1983)
上記のようにかなり以前からそのような報告は多数みられていています。
・内臓が左右非対称である
・脳機能が左右で異なる
・利き手がある(多くの人は)
これらのことから左右非対称にならざるを得ないと思います。よって、姿勢が多少左右非対称であったとしても不安になることはないと言えます。
▮社会交流の重要性
健康状態に問題のない高齢者では、独居といった居住形態ではなく、他者とのつながりが乏しい者(いわば、社会的孤立者)ほど身体機能低下、抑うつ、要介護状態等のリスクが高い、という報告があります(参考文献)。
つまり、交流が多い人程健康である、ということです。
▮おわりに
ここまでの内容から、健診のデータ、画像データ、姿勢データから、肉体面の正常は定義しにくいと考えられます。
経験的にも肉体面に何か問題があっても、精神面と社会面が満たされた人は元気に生活している印象があります。
肉体面にフォーカスするのは大事なんですが、前項の文献のように、社会交流にもフォーカスすることが健康を考えるうえではとても大事だと考えています。
私はフィジカルセラピストなので肉体面にアプローチし、そこから精神面と社会面に波及できたらよいと考えていますが、いくら肉体面が良くなっていても精神面と社会面が満たされていなかったらその人は健康にはなれないということを頭に入れておくことが重要だと考えます。
私の結論としては、健康は精神面と社会面がかなり影響している、ということです。
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