腰痛とは病名ではなく、腰部の痛みや不快感などの症状の総称をいいます。多くの人が人生に一度は腰痛を経験すると言われています。
▮腰痛の85%は原因が特定できない
これは、2001年にDeyoらが報告して以来、拡がっている知見で、様々な検査を行っても原因が特定できない腰痛を「非特異的腰痛」と呼ばれます。
この報告以来、腰痛の多くが原因不明、という認識が広がり、整体院に通う人が増えたのと、原因の一つとして脳の影響ということで認知行動療法が有名になったと思われます。
ちなにみ、この割合は厚生労働省でも同じような見解を示しております(資料)。
▮腰痛の78%は原因が特定できた
2016年山口大学のグループの報告では(文献)、78%の腰痛の原因が特定できたと述べています。
私の経験的にも腰痛で病院受診をすると、ある程度は原因が特定できる印象があります。
しかし、これはあくまで病院受診した人の割合になります!ほとんどの人は病院受診しない程度の腰痛の人が多い為、これらの数値のどちらが正しいのかは不明です!
され、これらの報告の数値の差はなんでしょうか?
原因の一つは医師の考え方が考えられます。Deyoはプライマリケア医であり、非特異的腰痛の原因をあえた追及しない立場をとっていたという説があります。
その医師がどのような検査をしたかは重要と思われます。
画像検査に加え、問診、理学検査を詳細に加えることで原因が特定できる割合が増えると考えられます。
▮特異的腰痛とは
原因が明確に特定できる腰痛は以下のものとなります。
①腫瘍
②感染
③骨折
④腰椎椎間板ヘルニア
⑤脊柱管狭窄症
⑥他科疾患(腎結石、尿路結石など)
▮非特異的腰痛の原因
非特異的腰痛は原因不明だけでなく、大きな問題ではない、と考えても良いと思います。
以下に非特異的腰痛の原因として主なものを記載致します。
①椎間関節 ②筋筋膜性 ③椎間板、神経障害 ④仙腸関節
▮特異的腰痛の見分け方
これは私見になりますが、以下のものをみると良いです。
・安静時痛があるか?➔あれば感染、骨折、腫瘍かも
・転倒後の痛みが長く継続➔骨折かも
・足の脱力感や肛門周囲の違和感がある➔脊柱管狭窄症、ヘルニアかも
・明らかな筋肉の硬さや圧痛がない➔特異性かも
逆に運動時痛がある、1~2週間で痛みが緩和する、神経症状(痺れ、肛門周囲の違和感、足の脱力感など)がない、明らかな筋肉の硬さや圧痛がある、などがある場合は非特異的腰痛の可能性が高いと思われます。
▮まとめ
私の経験では病院受診する腰痛患者の多くは、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアであることが多いです。
また、痛みが長期化する為、受診すると骨折、腎臓、腫瘍だったという方も診たことがあります。
非特異的腰痛が85%という認識が広がりすぎると、受診しなくても大丈夫と考えてしまいますが、非特異的腰痛でないのにマッサージや温熱療法をしている人がいるのが事実です。
まずは特異的腰痛か非特異的腰痛かを見分けることが重要と思われます!
不安をあおるわけではありませんが、このような知見を頭に入れておくことが自分の身を自分で守る為にも必要だと思います。
※執筆者のサロンはこちら➔https://www.reha-me.com
▮おすすめ本・参考文献
・Deyo et al..Low back pain.N Engl J Med. 2001 Feb 1;344(5):363-70.
・鈴木ら.Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study.PLoS One. 2016 Aug 22;11(8):e0160454. doi: 10.1371/journal.pone.0160454. eCollection 2016.