▮ はじめに
先日、小学校の体育の公開授業を見学してきました。
息子は以前なわとびが全く飛べませんでしたが、見学した時には普通に飛
思い起こせば、始めは全然できなかった自転車や水泳なども今では周りの子供と同じようなレベルになっています。
何でも練習すればできるようになるのは当たり前のように感じますが、学習のシステムを理解することはリハビリテーションの場面や会社での社員教育などで活かせると思います。
そんな訳で、本稿では運動学習についてまとめてみました。
【要約】 ・運動学習は「認知➡連合➡自動化」と段階を踏む。 ・運動イメージの形成が運動の遂行に強く関与している。 ・フィードックの入れ方で学習効果が変わってくる。 ・意識の向け方(内的、外的)でも学習効果が変わってくる。 ・誉められると学習が強化される。
▮ 学習段階について
学習は以下のような段階を追って行われると言われています。
①認知段階:言葉の認識。
前頭葉、側頭葉、頭頂葉の連合野活性化。
②連合段階:協調運動。
運動前野、連合野が選択的に活動。
③自動化段階:無意識運動。
基底核が活性化。
この段階の中で、学習と共に記憶され、海馬、基底核、補足運動野に保存され、運動
運動の実行は運動イメージがあって成立します!
つまりイメージができていない運動は遂行できないことがほとんどです。
バク転が出来ない人は、視界・足の力の入れ具合、背骨の反り具合・風の感じ方などをイメージできないと思います。
▮ 運動学習理論
運動学習の考え方にはいくつかありますが、有名なものをご紹介します。
🔷階層理論(Adams,1971)
これは、フィードバックにより記憶痕跡と知覚痕跡の運動誤差を修正して
●閉ループ理論
出力と入力が影響し合うもの(フィードバック制御)をいいます。
※ちなみに開ループはフィードフォワード制御のことを言います。
フィードックの入れ方に関しては、以下のようなことが言われています。
・施行後、毎回行フィードック数回施行してからの方が効果あり。
・結果の知識(KR)を与えすぎると依存する。
つまり、自身で考える、自身の身体を感じてもらうような働きかけが重要だと言えます。
🔷スキーマ理論(Schmidt,1975)
これは、経験に基づいて変容する記憶のコンポーネントのことです。階層理論は特定の運動を繰り返すことにより学習していく理論ですが、スキーマ理論は学習の転移をさします。
つまり、特定の運動だけでなく、学習された運動は似たような運動にも汎化されるということです。
いくつか例に出すと、スノーボード経験者はスケボーが上手い、野球経験者はハンドボールが上手い、ギターが弾ければベースは弾けるとかそんな感じです。
▮ その他学習に影響するもの
🔷意識の向け方
運動を遂行する際、意識の向け方に関する研究が多くされています。
身体内部へ意識を向けることを内的焦点といい、身体外部へ意識を向けることを外的焦点と言いますが、どちらに意識を向けるかはとても重要となります。下記のことを意識して課題を設定すると良いと思います。
・スキルが未熟な時期➔内的焦点課題が良い ・スキルがある程度身についている時期➔外的焦点課題が良い (perkings-ceccato N,2003) ・内的焦点のスキルを高める為には、パフォーマンスの結果を与えると良い ・外的焦点のスキルを高める為には、結果の知識を与えると良い (鈴木博人、2012)
例えば、バスケットボールをゴールに入れる課題を行う際、初心者は手首の力具合などに意識を向け、フィードバックはコツを与えます。慣れてきたらゴールを意識させ、フィードバックは入ったかどうかだけで良いということです。
🔷賞賛
人は誉められると嬉しいですよね。褒められるとドパミンが生成されます。
ドパミンは神経のつながりを強化すると言われています(参考文献➡★)!
誉めたら歩行速度が改善した(dobkin BH et al,2010)という報告なども多数みられます。
🔷模倣(マネ)
ミラーニューロンというものが脳内に存在します。これは、他者を見ると自身が同じ行動をとっているかのように”鏡”のような反応をする神経細胞です。
・自身が学習する➔獲得したい動作を見てから真似る、と良い
・他者に教える➔獲得させたい動作を見せてから真似させる、と良い
※正面より横に位置して動作を見せた方が良い!
🔷エラーレス学習
記憶障害者(認知症、高次脳機能障害者など)は一旦間違えると誤反応が残り、修正が難しいという特性がある(参考文献➔★)為、エラーレス学習が良いと言われています。
記憶障害者に限らず、発達障害者にも有効な場合もあります。
▮ まとめ
運動学習について様々な知見をまとめてみました。冒頭にも書きましたが、リハビリ場面だけでなく、自分の運動技術、子育て、社員教育など様々な面で使えると思います。
宜しければご参考下さい。
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【参考図書】