医療情報関係

遂行機能障害と生活機能について/脳卒中・脳挫傷後遺症

はじめに
ある番組で紹介されていた本(ケーキの切れない非行少年たち)を読みました!
とても面白かったので、その内容の一つをご紹介します。
少年院にいる子供の多くに遂行機能障害(認知機能障害)があるという事が書籍に書かれています!
遂行機能障害は社会生活でとても重要な機能ですが、多くの方が遂行機能障害という言葉を聞き慣れていないと思いますので、この記事では遂行機能障害について触れていきます。
【要約】
・遂行機能とは目標を立ててそれを達成する為に計画実行する認知機能である。
・遂行機能障害があると生活に支障がでると言われています。
・遂行機能を鍛える為には計画実行、ワーキングメモリ、注意の配分性を要する課題が良い。

遂行機能障害とは

遂行機能とは以下のことを司る脳の機能です。

①目標設定
②計画立案
③計画実行
④効果的遂行

つまり、目標を立ててそれを達成するために必要な認知機能です。

例えば、「8:30までに職場に着く」という目標があったとします。
その場合8:30から逆算し計画を立てますね。例えば、7:00に起きて7:45までにごはん食べて着替えをして等の準備を行い、8:00の電車に乗るという計画を立てて実行に移します。

また、遂行機能は脳の記憶機能と注意機能と重なる部分がありま

⚫︎記憶機能:ワーキングメモリ
一時的に記憶を保持しておくこと。
例)暗算、会話

⚫︎注意機能:配分性
2つ以上の事を同時進行で意識する事。
例)電話しながら料理、歩きながらジャンケン

上記の2つは遂行機能の一つです。これらの機能が低下していると計画を立てて実行に移す事が困難になります

つまり、遂行機能障害とは上記のような計画して実行する事が困難になる事です。

遂行機能と生活の関係

上記のように遂行機能は日常生活で多々必要とする機能です!
遂行機能障害があると認知症よりも日常生活に支障が出るという報告や、遂行機能は手段的ADL低下の程度に関連するという報告があります(Tran,2014)(Weiner,2017)。
※IADL:手段的日常生活動作(家事、買い物、服薬管理、電話の対応など)

このように重度の遂行機能障害がある場合は、生活に大きな支障をきたします。

遂行機能障害の訓練

類推的問題解決トレーニングを行うと、問題解決能力とIADL能力が向上したという報告があります(Man,2006)。
※類推的問題解決とは、既に習った内容との類似性に着目して新しい事柄を見いだす考え方のことを言う。

「非行少年はケーキが切れない」の著者は、一日5分の認知トレーニングを推奨しています。
   ↓   ↓

トレーニングの一つにさがし算というものがあります。
これは「2+8」という問題では「10」という答えしかないですが、
「足して10になる数は?」という問題では、「1+9、2+8、3+7、4+6、5+5」のように答えがいくつかあります。このような計算方法をさがし算と言います。
これが脳にとって良いそうです!

この書籍に書かれているもの以外にも遂行機能を高める訓練はたくさんあると思います。
例1)出かける準備をしてもらう(計画実行)。
例2)クイズゲーム(問題解決能力)。
例3)足踏みをしながら後出し負けじゃんけん(ワーキングメモリと注意の配分)。

終わりに

なんでいつも遅刻するの?
なんで服が着れないの?

という人は、やる気や身体の問題より脳の機能障害が問題かもしれません。
できない理由を多角的に見ることが専門家としては大事だと思います。

そして、社会生活で必要な遂行機能を鍛えるために子供のうちから認知機能を高める意識を持つことが大事ですし、高齢者なども同様に脳(前頭葉)を刺激するような生活が必要ですね。

※執筆者のサロンはこちら➔https://www.reha-me.com/

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