私は日頃、生活期(慢性期)の方を対象者として関わっていますが、その方たちの多くが「歩けなくなったらおしまい!」と言います。
しかし、多くの方を見ていると、歩けなくなることより、話せない、手が使えない方が生活に支障がでている印象があります。
手が使えないことで生活に支障が出ると言いましたが、指先の動きが最も大事になります。
例えば、電話を掛ける、冷蔵庫を開ける、コップで水を飲む、服のボタンを閉める、ティッシュをとる、お金を出すなど挙げたらキリがありません。
次いで困るのが、肩の動きを伴う動きです。例えば、髪を洗う、背中をかく、服の着脱、お尻を拭く、物を持って 運ぶなど挙げたらこれもキリがありません。
そこで今回は手の動きの中でも、苦手な人が多い結髪動作と結帯動作に絞り、記事にしたいと思います。
【記事の要約】 ・生活期では手(上肢)の機能は重要! ・結髪動作は肩関節外転の要素が大きく、次いで外旋の要素が大きい ・結帯動作は外転と内転の2パターンあり、異なる機序である ・結帯、結髪動作共に制限因子を考えてアプローチしましょう
❏ 結髪動作について
結髪動作は下写真のように髪を結ぶような動作ですが、中村より(文献)外転の要素が大きく、次いで外旋の要素が大きいとされています。
また、阿部らより(文献)外転が困難な場合は、肩関節屈曲運動で代償するとされている為、この動作を診ることで、外転が苦手がどうかも診ることができます。
▧ 外転動作について
肩関節外転動作は、千葉の書籍より鎖骨の動き(胸鎖関節、肩鎖関節)の動きの要素が大きいと言われています。
このことから、胸鎖関節と肩鎖関節の動きが乏しいと外転動作は困難になりやすいと言えます。
▧ 外旋動作について
肩関節外旋動作に関しては、乾より※肩甲骨後傾+外旋(胸郭から肩甲骨外側が離れる動き)が伴うとされています。
※ 乾哲也.Sportsmedicine 2018 No.205より
❏ 結帯動作
結帯動作は背中に手を回す動作ですが、白井より※以下のように2種類あるとされています。2種類共に内旋運動が有用だと言われています。
※ 白井孝尚.Sportsmedicine 2018 No.205より
①外転しながら挙上
このパターンは、肩甲骨が上方回旋、前傾、内旋となります。
肩関節の角度が挙がるにつれて、僧帽筋の活動が増加すると言われています。僧帽筋の中でも特に上部線維の活動が重要とされています。
②内転しながら挙上
このパターンは、手の位置がT12までは肩甲骨が上方回旋し、T12からT7までは肩甲骨が下方回旋すると言われています。
この動作は、僧帽筋の下部線維が優位に活動すると言われています
どちらのパターンも手の位置がT12までは肩甲上腕関節が優位で、T12〜7までは肩甲胸郭関節が優位と言われています。
▧ 内旋動作について
肩関節内旋運動は、乾より※肩甲骨前傾+内旋(胸郭から肩甲骨外側が離れる動き)が伴うとされています。
❏ まとめ
・結髪動作:外転、外旋大事!➡外転は鎖骨の動きが大事 <制限因子>肩関節前方組織(大胸筋、小胸筋、前方関節包など) ・結帯動作:伸展、内外転、内旋大事!➡2パターンあり、肩甲骨の動きが異なる。 <制限因子>肩関節後方組織(棘下筋、小円筋、後方関節包)、鳥口腕筋、鳥口上腕靭帯など
結髪動作、結帯動作は生活に必要な動きでありますし、セラピーを行う際や経過を追う評価としても利用することができます。
結髪動作、結帯動作を見る事で、その人が苦手な肩関節の運動を診ることができますし、それに伴い制限因子を予測することもできます。
少しでも参考になれば幸いです。
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