発達障害関係

発達障害を個性と捉える考え方

発達障害と診断されていない人が多い

まずはじめに、発達障害は病気ではありません
脳の器質的な問題です。昔はこの考えはなかった為、発達障害の人は、「変わった人」「できない人」などという見られ方を周囲からされていました。

現在は発達障害という言葉がよく聞かれるようになりましたが、昔はあまり浸透していませんでした。
現在の成人~高齢者の方は診断名はついていなくても、発達障害の人は多いと言われています。
人口の割合でいうと1~10%もいると言われています。
つまり100人に1~10人くらいの割合でいるということになります。
ちなみに、2002年の文科省の調査では6.3%と言われています。
とにかく組織では一人くらいは発達障害の人がいてもおかしくありません。なんとなく周りと異なる雰囲気の人っていませんか?もしかしたら、その人は発達障害かもしれません。

【記事の要約】
・発達障害とは、広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群)、学習障害、注意欠陥多動性障害などの脳機能の障害であり、独立している訳ではなく色々な症状が混合していることが多い。
・発達障害は「障害」と捉えず「個性」と捉える考え方も必要。個人と社会のギャップを埋めることで「障害」でなくなる。
・発達障害(個性)が武器になることもある。
・発達障害は治すという考え方より「支援する」という考え方が一般的である。
・発達障害者に対し、身体面、脳機能面、社会面から支援していくべきである。

 


発達障害とは、

自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの

とされています。大きく分けると

1.広汎性発達障害(PDD):自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群を含む
2.学習障害(LD)
3.注意欠陥多動性障害(ADHD)

となりますが、どれが一つという訳ではなく、混合しているのが多いです。
また、知的障害を合併していることもあります。
そして、ここからが発達障害でここからが発達障害でない、というようなはっきりとしたラインはありません。以下に一つずつ特徴を書いていきます。


自閉症スペクトラムとは、、

臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースを最優先させたいという本能的思考が強いことです!
自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症の総称のことです。ちなみに「スペクトラム」とは、連続体という意味で、軽症の人から重症の人まで広汎に分布しているという意味だそうです。

【特徴】
① 対人行動
1歳半くらいから特徴が出てきます。
例えば、オウム返し、思い出しての独り言(エコラリア)や、他者が注意を向けた者にやたら注意がむいてしまう共同注意、何かするときにやたら親の顔色を伺う社会的参照という症状があります。
また、動作ではバイバイの時、掌が自分の方を向いて行うのが特徴的です。

幼稚園の年少辺りからは、一人を好み、積極的に他人と関わろうとしない行動が見られます。
また、他人と関わっている時もワンパターンで一方的な関わりがみられます。
非言語コミュニケーションも苦手で、いわゆる空気が読めない様子が見られます。
他人の表情を読み取るのが苦手なようです。また、他人との距離感(パーソナルスペース)が近い傾向にあるそうです。

流暢に話ができるタイプの自閉症スペクトラムは、アスペルガー症候群と言います。
自分の関心事を長々話し続けて空気の読めない会話を行ってしまいます。
一つのことに集中するのが得意なので研究者に向いていたりします。し
かし、「なぜ?」というものが解決できないと落ち着かないことから、宗教やスピリチュアルにはまる人が多いそうです(これらを否定している訳ではありません)。

② こだわり
博士、オタクと呼ばれる傾向があります。こだわりはずっと同じものではなく、熱くなりしばらくすると冷めていく、といのを繰り返します。

③ 感覚異常
視覚、聴覚、味覚、触覚、温度感覚などに異常がみられることがあります。
うるさい音が苦手で、視覚情報の志向の強い人が多いですが、人によって異常な感覚が異なります。

④ 一旦覚えたことを忘れない
自閉症スペクトラムの人は記憶力が優れている人が多いです。
これは特技になりますが、嫌な記憶も忘れない為、嫌な記憶を思い出して心痛を味わうことが多いのも特徴です。


学習障害(LD)とは、、

字を読む、字を書く、計算する、のどれかが極めて苦手な状態のことです。
最も頻度が多いとされているのが、読字障害(ディスレクシア)です。
しかし、会話や対人関係に問題はありません。全てが苦手な場合は知的障害を疑います。
学習障害は、学童期の約5%に存在すると言われています。

自閉症スペクトラムで学習障害がある方は、小学校2年で九九が覚えられない場合に疑います。
ADHDによる不注意症状があれば学習面でのケアレスミスが多くみられます。ADHDと学習障害の合併率は高いという報告があります。


注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、、

不注意、多動、衝動的、が学齢期以降も持続する状態です。
大昔のハンターがもっている特性とも言われています。全方向的に関心が向き、行動的なので政治家や起業家に向いているという特徴があります。
ADHDの80%が学習障害があると言われています。

【特徴】
① 不注意
例)ケアレスミスが多い。集中が困難。話を聞けない。課題の順序立てが困難。物をなくす。途中で投げ出す。
② 多動
例)椅子におとなしく座れない。おとなしい遊び(読書、人形など)が苦手。会話が一方的。
③ 衝動的
例)順番を守れない。質問が終わる前に答えてしまう。他人を妨害してします。


知的障害とは、、

発達期には発症し、概念的、社会的および実用的な領域における知的機能と適応機能両面の欠陥を含む障害のことである。

明確なラインはありませんが、IQ70~75以下を知的障害としている自治体が多いそうです。
しかし、IQの数値より何かできなくて、何ができるのか、という評価が重要になります。


発達障害を個性と捉える

発達障害が障害になるかどうかは社会(環境)との関係によって変わってきます
例えば、視力が低い人はメガネやコンタクトレンズがある為障害にはなりませんが、もしこれらがなければ障害となります。
障害は個人(身体)の問題だけでなく、社会(環境)にも目を向ける必要があります。

正に個人と社会とのギャップを埋める作業リハビリテーションです!
リハビリテーションは怪我をしたり、脳卒中などの病気になった人に行うイメージがあると思いますが、発達障害にも当てはまると思います。
リハビリテーションの考え通り、発達障害も個人を社会に近づける為の個人のトレーニングと、社会を個人に近づける為の環境整備や支援や法整備の両輪で行っていく必要があります。

私は個性は武器だと思っています(これを言うと反論する人もいますが..)!
武器は使い方によって効果が変わってきます。その武器を活かせるような組織、社会であればその武器は「障害」にはなりません。

周りと同じようにしないといけないという風潮がありますが、周りと違うことに誇りを持った方がよい、という考えもあります。
何もかも周りと同じでないといけないというのは、昔からの教育の影響もあると思います。
今後、このような考えが変わっていくと良いと思っています。

周りと違うものは無理矢理合わせようとせず、個性(武器)として認識しましょう!
大人になるとわかりますが、自分の色を持っていた方が良いですよ(^^)




支援方法

発達障害は、治すものではなく、支援するものです。
そもそも障害にならないこともありますので、治るという概念ではありません。
このような支援のことを治療的教育と呼び、略して「療育」と呼ばれます。以下に各発達障害の支援方法を書きます。

自閉症スペクトラム
・具体的にわかりやすく伝える。
・視覚(絵カードや写真)によるコミュニケーションが有効。
・こだわりとなくすのではなく、許していく

学習障害
・聞くことが苦手なので、まずは聴覚検査してみる
・視覚的な情報を与えていく
・得意なものを活かせる環境を設定する

ADHD
・不注意:チェックシート利用。集中できない原因を探る。
・多動:大人しくする環境を設定する。頭で考えることを行う。

上記をまとめると、視覚からの情報が有効環境設定を行う周囲の理解をあおぐのが良いとなります。

基本的には、なんでも自分で一人でなんでも行うような自立を目指すのではなく、自分でできることは自分で行い、できないことは他人に頼みコントロールしていく(自律)ことが良いです!
そのためにも、成功体験を繰り返し自己肯定感を感じてもらうのが良いです。

自閉症スペクトラムの子供は、中学校辺りから行動が落ち着くことが多いそうです。
しかし、中学校入学までの間に適切な支援を行うことが望ましいです。
支援の開始時期は早いに越したことはないとされています。
ある書籍には8歳までに介入するのが良いと書いてありました。理由は8歳で脳の95%が完成する為だそうです。

▧ABC分析~応用行動分析から考える~

これは応用行動分析学でいうABC分析というものが良いと思います。
行動には、先行刺激と後続刺激があります。
一般的には行動は後続刺激の影響を受けると言われています。
例えば、椅子に座らない子に対して、座った後に褒めることで座るという行動が定着する可能性があります。
逆に座ったにも関わらず説教をしてしまうと座るという行動は定着しにくい傾向にあります。
先行刺激の原因を分析することも重要ですが、行動を変えるためには後続刺激を強化(レスぺランス強化)を意識しましょう。

▧身体面からのアプローチ

これは私見ですが、発達障害の方は言語発達が遅れていることが多いです。
言語発達の遅れの為に言語訓練を行うのは良いと思いますが、以下では私の考えを書きます。

進化の過程で考えてみると、二足歩行を獲得したのが300万年前と言われ、発声が可能になったのが7万年前と言われています。
つまり、二足歩行の方がかなり先に獲得されています。

言語障害の方にはまずは身体の発達を促すことが良いと考えています。経験的には体幹が弱い方が多いです!
そして発声は呼吸運動舌運動を伴います。これらの運動機能が低下しているのも言語発達が遅い原因と考えています。

・体幹トレーニング
・呼吸トレーニング
・舌トレーニング

私は言語発達が遅い方には言語訓練と並行して、上記のトレーニングを行うと良いと考えています!具体的な内容は割愛致します。

また、自閉症の人はセロトニンが少ないという研究報告もあります。
セロトニンを増やす方法は、

・リズム運動 :歩行、咀嚼(ガムを噛むなど)、音楽 など
・日光浴
・交流

が良いとされています。
セロトニンを増やすことで症状が緩和したという報告もあるそうなので試してみる価値ありです。
また、ビタミンDも少ないと言われているようなので、ビタミンDを含む食材を食べるのも良いと思われます。

そして、ADHDの人はドパミンが過剰になっているという説もあります。
ドパミンは幸せホルモンと言われており、多く分泌されると学習効果が高まるとされておりますが、過剰になると麻薬のような症状(多動)が出現すると言われています。

▧脳トレーニング

発達障害は治すのではなく支援が中心だと書きましたが、トレーニング次第で定型発達のルートをたどることができると言われています。
発達障害の人は、前頭葉、海馬、扁桃体への神経伝達に何らかの異常があると言われています。
発達障害は、脳の機能障害の為、脳に対するアプローチを行うと効果が期待できます。いくつか紹介します。

・数字を3~4桁言った後に、その数字を書いてもらう:ワーキングメモリを鍛える
・砂場遊び、お絵かき:創造性を鍛える
・山なりのキャッチボール:両手協調動作、予測、視線運動を鍛える

などなどありますが、これらについては別のコラムで詳しく書きたいと思います。

※ ワーキングメモリ:記憶を一時保存しておく脳機能(前頭前野)。無意識に会話などで使っている。

▧いじめ、うつ

発達障害の方は社会になじめずいじめの対象になったり、精神的に落ち込みが強くなりうつ病になる人がいるのが現状です。

小さい頃は、本人の周囲に理解者がいることが重要になります(互助)。
あまり学校の先生や友人に期待せず、親が一番の理解者になってあげるが良いです。大人になったら自分自分の理解も必要になります(自助)。

将来的には、社会全体の理解が進み、発達障害の人の劣等感が減るのが理想です!
そして、発達障害の人は変わり者なので、特技を活かせば社会で活躍できると思います。
就労支援などを活用して適材適所で働けるのが理想です。


発達障害がメリットになる!!

巷でよく言われる成功者には、発達障害が多いと言われております。
前述したように、発達障害が障害になるかどうかは、周囲の環境によります。
個性は特技になれば武器になり、周りから突出する可能性が高いです。
個人に合った環境を設定していくことと、周囲の理解を深めていくことが重要ですね。

最後に、このコラムは発達「障害」と書いていましたが、前述の通り障害になるかどうかは環境によるものなので、障害ではなく「遅滞」と言ってもいいと思いますが、障害の方が一般的で分かりやすいため発達障害という言葉を使いました。気を悪くされた方がいたら申し訳ありません。

発達障害で悩む親が多いと思いますが、考え方や支援方法により悩みが軽減すると思います。

※執筆者のサロンはこちら➔https://www.reha-me.com/  


【参考図書】
・自閉症スペクトラム 本田秀夫 著

発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。長谷川 敦弥 著(おススメ

・子どもの発達障害と支援のしかたがわかる本  西永堅 著

・発達障害  岩波明 著

・発達障害の改善と予防  澤口俊之 著(おススメ

・大人の発達障害  備瀬哲弘 著

・発達障害を治す  大森隆史 著

・わかってほしい!気になる子  田中康雄 著

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