治療関係

使えるストレッチのまとめ/リハビリ、トレーナー必見!

ストレッチ」という言葉は、1960年頃にアメリカで発表されたスポーツ科学の論文中で使われ始め、1970年代後半より急速に概念が広がった、と言われています(Wikipediaより)。

現在はリハビリテーションやスポーツ分野で使われており、一般的にも広く知れ渡っている言葉ですが、ここではストレッチについての知見と私見を書きたいと思います。

【記事の要約】
・ストレッチは組織の柔軟性向上、毛細血管増大、神経システムを抑制等の効果がある。
・スタティック、ダイナミック、バリスティック、PNFと大きく分けると4種類のストレッチがある。
・柔軟性向上、筋力向上など目的に応じて用いるストレッチは変わってくる。
・ダイナミックストレッチは効果が多様でリスクが少ないため利用しやすい。

ストレッチの目的と効果

【目的】 けが予防代謝向上 などが主ですが、気持ちいい感覚が入ればストレス解消にもなります。

【効果】 軟部組織の柔軟性(弾力)向上毛細血管増大、神経システムをリラックスする などがあり、結果的に筋力向上にもつながります。

関節の不動や神経の麻痺により、筋肉が使われなくなると、身体は硬くなっていきます。弾性結合組織が線維性組織になると戻すのは無理だと言われています。




ストレッチの種類

大きく分けると自動と他動に分かれると思いますが、以下では手法により分類したいと思います。

1.スタティックストレッチ:自動、他動
2.ダイナミックストレッチ:自動、他動
3.バリスティックストレッチ:自動、他動
4.PNFストレッチ:自動、他動

1.スタティックストレッチ(静的ストレッチ)
スタティックストレッチとは、反動をつけずにゆっくりと筋肉を伸張し、その状態で保持する方法で、筋緊張を抑制する効果があると言われています。
筋肉、筋肉を包む膜(筋膜)だけでなく、血管や神経も伸張されます。皮膚、皮下組織も伸張されそうですが、これらにはあまり負荷を与えられないと言われています。
ちなみに靭帯は、150%まで伸張できると言われていますが、現実的にあまり伸張することができずむしろ制限因子となります。
また、神経は伸長が維持され続けると元に戻りにくくなりますので要注意です。スタティックストレッチ中、血行は低下しますが、その後リバウンドで血行が増加すると言われております。

ストレッチ時間に関しては様々な研究がありますが、20~30秒保持し数回繰り返すのが効果的と言われています。ただし、6秒、10秒でも効果があったという報告もありますので、個別性があると思います。
恐らく硬くなっている人程長く時間をかけた方が良いと感じています。可動域拡大に関しては数回繰り返すと良いとされていますが、1回目の効果が最も著明のようです。

効果に関する研究も様々ありますが、一般的にはスタティックストレッチ直後は筋力が低下すると言われておりますが、長期的には可動範囲が広がり筋力はむしろ向上すると言われています。そして筋肉、筋膜の柔軟性が向上することで、腱への負担が減り、怪我の予防につながります。

 

2.ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)
これは収縮と弛緩を繰り返す運動となります。ただしあまり速い速度で行うのではなく割とゆっくりと動かすストレッチとなります。一般的にはラジオ体操第一がこれに相当します。
また、スポーツ選手が運動前によく行う運動として取り入れられています。関節を多方向に動かすため、たくさんの神経や筋肉が動員されるため、脳の活性化や動きのコーディネートには必要なストレッチだと考えています。

動かすことによりIa抑制(相反神経支配)といわれる生理的反応が起こり、硬くなっている筋肉を柔らかくする作用も働きますが、効果の研究としてはダイナミックストレッチ直後の可動域拡大はあまりみられず、筋力向上の方がみられると言われています。
よって、動く前(競技前)に行うと良いとされています。経験的には可動域の変化もみられることが多いと思います。

 

3.バリスティックストレッチ
これは反動をつけて筋肉を伸張させるストレッチです。
速く動かすことにより伸張反射と呼ばれる生理的反応が起こり、筋緊張を亢進させる作用があります。よって柔軟性を高める目的には適さないとされています。

 

4.PNFストレッチ(等尺性収縮を利用したもの)
PNFとはProprioceptive Neuromuscular Facilitationの略で固有受容器神経筋促通法と呼ばれております。
一般的な方法は、最終可動域で軽度~中等度の等尺性収縮(関節を動かさずに力を入れてもらう)を、数秒~10秒くらい行った後、力を抜くというものです。
これは生理学的には、筋腱移行部に多く存在するゴルジ腱受容器からのIb線維が反応し、力を入れた筋肉の緊張を抑制するというものです(Ib抑制)。

効果としては直後の可動域拡大は顕著にみられると言われています。
経験的には、負荷が高い為、血圧が高い方にはリスクが高いと思いますし、相手の協力が必要なので指示理解が難しい方、モチベーションの低い方には選択しにくい方法といえます。


ストレッチの使い分けについて

ここからは使い分けによる私見になりますのでご了承ください。

■ 柔軟性向上 ⇒ スタティックストレッチ、PNFストレッチ

■ 筋力向上  ⇒ ダイナミックストレッチ、バリスティックストレッチ
■ 運動前 ⇒ ダイナミックストレッチ、バリスティックストレッチ

■ 運動後 ⇒ スタティックストレッチ

が基本となります。アプローチとしても4種のストレッチングでなんとかなります。

■ 弱化筋 ⇒ 筋トレ(ダイナミックストレッチ)、筋肉への刺激(バリスティックストレッチ)

■ 硬化筋 ⇒ スタティックストレッチ、PNFストレッチ、(ダイナミックストレッチ)

個人的にはダイナミックストレッチは利用範囲が広いと思います。
弱い筋肉を鍛える運動は、ある意味拮抗筋(反対側の筋肉)を緩めているともいえます。
硬化筋に対しても関節の適合性を意識して動かし、脳に動きの感覚が入力されることで筋緊張が抑制されてきます。
よって、ダイナミックストレッチは使い方によって対応が多様と考えています。

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【参考文献】
・「ストレッチングの科学」 鈴木重行 著

・「ストレッチングセラピー」 Jari Yline 著

・「関節可動域制限―病態の理解と治療の考え方」 沖田実 著

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