▮はじめに
マッサージは効果がないという人がいますが、結論から申し上げると効果あります。
今回はマッサージの中でも多く行われる押圧マッサージのメカニズムやその効果について解説します。
▮押圧マッサージに効果がある理由
押圧マッサージは「なんとなく気持ちいいから効く」のような曖昧な話ではなく、神経・循環・筋・心理の生理学的メカニズムで説明できます。以下に科学的見解を体系的に整理します。
① 神経生理学的メカニズム
● ゲートコントロール理論
痛みを感じさせる神経線維(細いAδ線維、C線維)と、触覚・圧覚を感じさせる神経線維(太いAβ線維)が存在しますが、細い神経線維から脳に届くため、痛む部位をさすると太いAβ線維が刺激され、痛みを伝える信号よりも速く脳に到達し、痛みの信号を遮断するため、痛みが和らぐというメカニズムの理論です。
つまり、押圧によりAβ線維が優先的に脊髄後角を刺激され 、痛み信号が遮断され即時的な鎮痛効果になっています。
● 下行性疼痛抑制系の活性化
痛みを感じると、脳(特に脳幹部)から脊髄へ下行する抑制性の信号が出されます。この信号により、脊髄後角でセロトニンやノルアドレナリンが放出されます。これらの物質が、痛みを伝える神経と次の神経の間のシナプスに作用し、痛みの伝達をブロックします。
押圧刺激により脳幹から抑制性の信号が出され、 セロトニン・ノルアドレナリンが放出され、 痛みの伝達がブロックされるため鎮痛効果になっています。
② 筋・筋膜レベルの作用
● 筋緊張の低下(Ⅰb抑制)
筋肉には過度な収縮や張力を感知し、その同じ筋肉自体の活動を抑制する防御的なメカニズムがあります(Ⅰb抑制)。
強すぎない持続的な押圧によりゴルジ腱器官が感知し、求心性線維(Ⅰb線維)を介し α運動ニューロンを抑制することで筋緊張を低下させます。
● 筋膜の粘弾性変化
持続的な押圧により筋膜内の水分移動が起き、粘性が低下し滑走性が改善すると考えられます。
③ 循環・体液循環への影響
● 局所血流の変化
押圧により一時的な虚血状態となるが、押圧が解除されると反応性充血が起こります。
反応性充血とは、臓器や組織への血流が一時的に遮断された後、血流が回復する際に遮断前よりも多くの血液が流れ込む現象です。
● リンパ・間質液循環
押圧により間質圧変化が起こり、浮腫(むくみ)の軽減、組織内圧の低下が起こります。
④ 心理・中枢神経的要因
● 期待・安心による効果
触れられることで扁桃体の活動が低下し、前頭前野・報酬系が活性化し、痛みの知覚自体が低下すると考えられます。
▮まとめ
押圧マッサージは、筋を「物理的に変える」のではなく、神経系や循環器系を介して「痛みと緊張の制御」を行うため効果があるといえます。以下に押圧マッサージの効果の理由を箇条書きでまとめます。
1.痛み伝達の抑制
2.内因性鎮痛系の活性
3.筋緊張の反射性低下
4.局所循環改善
5.中枢での痛み知覚の再評価
また、軽擦マッサージは表在感覚にアクセスしてリラクゼーション作用がありますし、殴打マッサージは筋への刺激・覚醒作用があるため、マッサージ全般をうまく使うと身体の筋緊張バランスを整えることにつながります。