医療情報関係

がんのリハビリテーションについて~役割と注意点を中心に~

はじめに

近年、在宅でのリハビリテーションの利用が拡がってきており、がんの利用者(患者)に対するリハビリテーションのオーダーも増えてきております。
がん患者に対して運動療法、呼吸療法、リラクゼーションが良いということが知られていますが、介入時の注意点に関しては知らずに行ってしまうと良くないので、今回はその点を中心にまとめていきたいと思います。

【要約】
・がんのリハビリテーションの役割は、がんの時期によって異なる
・中止基準を頭に入れておくのが良い
・注意点に関しては、骨転移、血栓、胸水、貧血など様々あるが、精神面への配慮も重要

がんに対するリハビリテーションの役割

がん治療やがんの進行に伴い嚥下障害、発声障害、運動麻痺、筋力低下、拘縮、しびれ、神経因性疼痛、四肢長管骨や脊椎の病的骨折、上下肢の浮腫など様々な機能障害が生じ、それらの機能障害によって移乗動作、歩行、日常生活動作などに影響を及ぼします。
上記の機能障害によって起こる動作による二次障害予防(誤嚥、転倒、廃用症候群など)、そして機能の維持・改善を目的に介入していきます(辻哲也,理学療法学,2015)。

また、がんの段階によって役割が異なります。

がん発見時期予防的介入(以後身体機能が低下しないように)
治療開始時期回復的介入(低下した身体機能の回復が目的)
再発/転移維持的介入(身体機能低下が進行しているため機能維持訓練、動作訓練、福祉用具使用など実施)
末期がん緩和的介入(本人の希望を聞きながら生活の質(QOL)向上目的に)
(辻哲也,日本医師会雑誌,2011)

と大きく4つの時期に分けて考えると良いと言われています。

がんのリハビリテーションの中止基準

がんのリハビリテーションは医師の指示のもと行っていきますが、リハビリテーション従事者やがん患者自身も頭に入れておくと良いでしょう。

1.血液所見:ヘモグロビン 7.5 g/dl 以下,血小板 50,000/∝l 以下,白血球 3,000/∝ 以下
2. 骨皮質の 50%以上の浸潤,骨中心部に向かう骨びらん,大腿骨の 3 cm 以上の病変などを有する長管骨の転移所見
3.有腔内臓,血管,脊髄の圧迫
4.疼痛,呼吸困難,運動制限を伴う胸膜,心嚢,腹膜,後腹膜への浸出液貯留
5.中枢神経系の機能低下,意識障害,頭蓋内圧亢進
6.低・高カリウム血症,低ナトリウム血症,低・高カルシウム血症
7.起立性低血圧,160/100 mmHg 以上の高血圧
8.110/ 分以上の頻脈,心室性不整脈
(辻哲也,理学療法学,2015)

がんのリハビリテーションの注意点

次に、リハビリテーションの中止基準には至っていない状態でも注意しておくべき事項を説明します(辻哲也,理学療法学,2015)。

1.骨転移
骨転移は脊椎、骨盤、大腿骨近位、上腕骨近位に起こりやすいため、それらの部位の疼痛評価は重要です。
また、転移後はコルセットの着用の勧め、転移部への負担を減らす動作方法の指導などが重要です。

2.血栓、塞栓
がんにより凝固系・線溶系に異常をきたしていることがあり、臥床傾向が強いこともあり血栓・塞栓のリスクが高くなります。よって、このリスクが高い場合は下肢のマッサージは禁忌となります。

3.胸水、腹水
四肢に浮腫がみられて胸水や腹水が貯まっている場合は、呼吸困難感腹部膨満感を訴えることがあるため、酸素飽和度を確認しながら行っていく必要があります。

4.感染、貧血
化学療法中、放射線治療中は骨髄抑制が生じ感染リスクが高まるため、感染予防が重要になります。また、ヘモグロビンが減少している場合は運動中に貧血のリスクもあります。

5.告知、精神面
介入する際、がんの告知が患者本人にされているかどうかの確認は重要です。
また、がん患者は精神的に問題を抱えている人が多いため、言葉の選択や関わり方には配慮をしながら行う必要があります。

おわりに

以上、がんのリハビリテーションに関する記事となります。
各がんに対する注意点やアプローチに関してはガイドラインをご参照ください(こちら)。

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