介護関係

褥瘡(床ずれ)予防としての体位変換について

はじめに

褥瘡(床ずれ)は自ら移動が困難で、ベッド生活や座位生活が中心になる人に起こりやすい状態です。
昔から褥瘡予防として2時間ごとの体位変換が推奨されていますが、この見解は1977年に出版された書籍に書かれたものであり、現在は2時間という数字に明確なエビデンスはないとされています。

今回は褥瘡に関する初歩的な内容と、褥瘡予防に対する体位変換についての内容を書いていきます。

【要約】
・褥瘡は予防が大事。
・褥瘡は骨突出部に起こりやすい。
・基本動作能力低下し自力で動けない人に対してはポジショニング、体位変換が必要。
・体位変換は2時間おきという訳ではなく、適切な体圧分散マットレスを使用すれば4~6時間でも大丈夫かもしれない。

褥瘡とは

褥瘡とは体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです(日本褥瘡学会より)。

仰向けや座位では以下の黄色の部位に褥瘡ができやすくなります。

 
黄色部>座位:肩甲骨、坐骨、尾骨
黄色部>仰向け:後頭部、肩甲骨、仙骨、踵

褥瘡は一度できると治癒するまでにかなり時間を要しますし、痛みを伴うため本人への負担も大きいです。
また、褥瘡部から感染して重篤化するリスクもあるため、予防することが重要になります。

褥瘡予防について

以下は褥瘡危険因子評価表です(褥瘡予防・管理ガイドラインより)。

上記の危険因子から褥瘡予防に必要なものは、

①基本的動作能力の把握
②骨突出部への体圧分散
③関節拘縮予防
④栄養管理
⑤皮膚のケア
⑥浮腫を予防する

といえます。

その中で基本動作能力が低下しており自立で体位変換ができない人に対しては、適宜体位変換や体圧分散マットの利用などが望まれます。

体位変換はどのくらいやればよい?

ナーシングホーム入所者838名に対し、マットレスの種類別に体位変換時間を変えたランダム化比較試験があり、体圧分散マットレス使用下での2〜4時間毎の体位変換は、減圧効果のないマットレス使用下の2〜4時間毎の体位変換より褥瘡発生は低下した、という報告があります(参考文献:PMID 11565421)。

しかしこの報告は対象者が日本人でないことと、マットレスの質がどの程度か不明なことです。

また、同じくナーシングホーム入所者838名を対象に標準的な予防ケア群(576名)以外の、標準マットレス下での2時間体位変換群(65名)、標準マットレス下での3時間体位変換群(65名)、体圧分散マットレス(Viscoelastic foam)を用いた4時間体位変換群(67名)、体圧分散マットレスを用いた6時間体位変換群(65名)の褥瘡発生率を比較したランダム化比較試験1では、グレード I の褥瘡発生率に差がなかった、という報告があります(参考文献:PMID 15582638)。

このことから、本人の状態に加え体圧分散マットレスの質によっては2時間ではなく6時間ごとでも問題ないかもしれません。

※画像は参考写真

まとめ

以上、褥瘡に関する簡単な説明と褥瘡予防で必要な体位変換について述べさせていただきました。
マンパワーの問題で2時間おきに体位変換が行えない施設ではマットレスの利用が望ましいですね。
また、褥瘡は栄養や摩擦やせん断力(ズレの力)による影響もあるので、予防は多角的に見ていかないといけませんね。

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