リハビリテーション関係

二重課題(Dual Task)歩行と転倒の関係

はじめに

二重課題とは、認知課題運動課題 2 つ同時に行う課題を指します。
リハビリテーションでは二重課題と転倒との関係について多くの報告があるため、今回はそのことについての記事になります。

【要約】
・歩きながら話しかけると立ち止まってしまう高齢者は転倒リスクが高い。
・二重課題で歩行速度が低下する割合が大きい人ほど転倒リスクが高い。
・二重課題で歩行速度が低下する人は注意機能が低下している人が多い。
二重課題による転倒リスク予測は誰でも適応するわけではなく、特に虚弱高齢者の転倒リスク上昇と有意に関連していた

二重課題と転倒リスクの関係

1997年に歩行中に話しかけると立ち止まってしまう高齢者は、将来転倒するリスクが高いという報告が出ました(参考文献)。
すなわち会話(認知課題)、歩行(運動課題)の二重課題を見ることで転倒リスクを予想できるというものです。

それ以降二重課題と転倒に関する報告はたくさんありますが、日本では山田氏の論文が分かりやすいのでご紹介します。

①二重課題時の歩行速度と転倒の関係
杖歩行や独歩が可能な地域在住高齢者を対象に歩きながら100から2を引いていく課題を行ったとき、普通に歩いている時と比べて歩行速度が低下する割合が38.8%を境目に転倒率が大きく変化すると報告しています(参考文献)。

②二重課題時の歩行では注意機能が関係している
杖歩行や独歩が可能な地域在住高齢者を対象に歩きながら100から1を引いていく課題を行ったが、この時の歩行速度と認知機能を測定する検査(MMSE)と注意機能を測定する検査(TMT-A)の値と相関関係を示したと報告しています(参考文献)。
つまり、歩行速度が低下する割合が大きい人ほど認知機能と注意機能が低下しているいうことです。


※MMSE:質問形式による検査


 ※TMT-A:①から順に線を引いていく検査

このように二重課題と転倒があるという報告がある一方で、Beauchet(2009)らのレビューによると、二重課題による転倒リスク予測は誰でも適応するわけではなく、特に虚弱高齢者の転倒リスク上昇と有意に関連していたと報告しています。

おわりに

二重課題は上記で紹介した計算だけでなく、動物や野菜の呼称課題など様々な課題がありますので、試していただければと思います。
また、トレーニングに関しては歩きながら番号を探したり、座って足踏みをしながら野菜を呼称したりなど様々ありますので、それも対象者に応じて認知課題と運動課題を組み合わせて行っていくのが良いと思います(参考文献)。

いずれにせよ転倒は筋力、柔軟性、平衡感覚、視覚などの身体機能のみでなく、認知機能や注意機能も関与するという点は大事かと思います。

【参考文献】
L Lundin-Olsson et al,Lanset,1997
・山田実ら,二重課題条件下での歩行時間は転倒の予測因子となりうる,理学療法科学,2007
・山田実ら,高齢者における二重課題条件下の歩行能力には注意機能が関与している,理学療法科学,2008
・Beauchet et al,Eur J Neurol,2009
・山田実,高齢者のテーラーメード型転倒予防,運動疫学研究,2012

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です