医療情報関係

健康には運動が最強である!~ACSMの運動指針を中心に~

はじめに

運動が健康にとって良いというのはよく知られていると思います。
しかし、実際にどのような効果があって、どのくらい運動すれば良いのか、というのは案外知ら知られておりません。
この記事では運動による効用と健康のための運動の種類や量について書いていきます。

【要約】
・座っている時間が長いとあらゆる疾患のリスクが高まる。
・運動は身体面、精神・心理面などに良い影響がある。
・運動はACSMの指針に従うと良い。
・中強度~高強度運動が困難な人は低強度で疲れるまでやると良い

動かないことによる健康の不利益

運動の効用の前に、座りすぎによる健康への不利益にどのようなものがあるかを箇条書きしていきます。

・狭心症
・関節痛
・不整脈
・乳がん
・心不全
・うつ病
・消化器疾患
・胆石
・高血圧
・認知機能低下
・肥満
・骨粗しょう症
・すい臓がん
・末梢血管疾患
・前立腺がん
・呼吸器疾患
・睡眠時無呼吸症候群
・脳卒中
・2型糖尿病
Simon J Lees、,et al,2004)

厚生労働省の令和元年のデータによると、要支援・要介護になった要因の上位項目(関節疾患、認知症、脳卒中、転倒など)全て網羅してますね。

運動の効用

現在、言われているものをざっと挙げただけでも運動をすることで下記のような効用があります。

①身体面
・心臓、肺を丈夫にする
・肥満を解消する
・代謝をよくする
・筋力向上する
・骨を丈夫にする

②心理、精神面
・ストレス解消
・認知症の予防

③その他
・睡眠障害の改善
・QOLの改善

上記のような効用があらゆる疾患(高血圧、糖尿病、がん等)の予防につながり、高齢者であれば転倒予防にもつながります。
次に運動について述べていきます。

運動をどのくらい行えばよいか?

運動は大きく分けると、
・有酸素運動
・筋トレ(レジスタンストレーニング)
・ストレッチ
に分けられます。
ここでは世界54か国以上で会員5万以上を有するアメリカスポーツ医学会(ACSM )の運動指針を紹介します。

ACSMでは週 5 日、1 回 30 分 の中等度の有酸素運動、または週 3 回、1 回 20 分 の高強度の有酸素運動を行うことを推奨しています。 しかし,これは確実に実施できた場合の効果です(B H Marcus,1998)。

また、ACSMでは、最大筋 力の49%までを低強度(very lightまたはlight)、50 ~ 69%を中強度(moderate)、70%以上を高強度(vigorous またはnear-maximal to maximal)と分類しています(Garber CE, Blissmer B, Deschenes MR, et al.Med Sci Sports Exerc, 2011)。

65歳以上の高齢者に対しては、有酸素運動と筋力トレーニングに加え、転倒予防の目的として、柔軟性やバランスを養うための運動も取り入れることが合わせて推奨されています。
頻度(Frequency)、運動強度(Intensity)、時間(Time)、運動様式(Type)を合わせて FITTと言いますが、これに合わせてACSMが高齢者に対する運動指針を以下の表に示します。

 

 

中強度、高強度の運動が困難な人に対して、、、

高齢者の中には体力低下、心肺機能低下によって中等度以上の運動が行えない方がたくさんいます。
そこで、筋トレの負荷量は回数より「疲れるまでやる」というのが大事という報告があります(Baz-Valle,2018)。
また、 低負荷の運動でもゆっくり行えば筋肥大と筋力向上が得られるとも言われています(Watanabe,Ishii,2014)。
このことから、筋トレを低負荷でゆっくりと疲れるまで行うことが大事だと考えられます。

運動は強度によらず、脂肪症やインスリン感受性やメタボリックシンドロームの重症度を改善する(Emily M Heiston,2020)とも言われていますので、まずは軽い運動や座る時間を減らすことから始めると良いと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です