リハビリテーション関係

自主トレーニング(セルフエクササイズ)は定着するのか?

はじめに

リハビリや腰痛予防などでは自主トレーニング(以下、自主トレ)が重要視されていますが、実際に自主トレが定着して効果を出している人がどのくらいいるのでしょうか?
私はリハビリテーション専門職ですが、現場での肌感覚でも自主トレを指導してもそれを適切に実践している人の方が圧倒的に少ないです。
この記事では自主トレを実施する人としない人の特徴や効果について論文の紹介と私見を交えて説明したいと思います。

【要約】
・認知症と睡眠障害がある人は自主トレが定着しにくい。
・自主トレを行うためには難易度が関係している。
・自主トレを行う意思(アドヒアランス)も重要。
・自主トレの効果はある。

自主トレが定着する人の特徴

日本人を対象として研究(学術大会より)で面白い報告を一つ紹介します。
屋外歩行が自立しているレベルで訪問リハビリを利用している人を対象としたものですが、認知症と睡眠障害がある人は自主トレを行わない傾向があり、また屋外での転倒リスクが低い人ほど自主トレをやらない傾向がある、とのことです(参考文献①)。

このことから「リハビリをしている意味が不十分で、日中ボーっとしている人が自主トレを行わない」
また、「身体能力に自信のある人は自主トレを必要と思っていない」
と推測できます。

自主トレをする理由としない理由

オーストラリアの高齢者を対象として研究ですが、自主トレを行った理由と行わなかった理由に関する報告(参考文献②)を紹介します。

<自主トレを行った理由>
難易度がちょうどいい、複数で行える、音楽に合わせて行える、ついでに行える など。

<自主トレを行わなかった理由>
難易度が高い、自宅の環境が悪い、介助する人がいない など。


他国の調査ですが、日本人でも同じような傾向がみられるかもしれません。
やらない理由は人によって様々だと思いますが、やはり難易度は重要かと思います。また、ついでに行える、というのも重要かと思います。
これに関しては以前noteにまとめた記事があるので、よろしければそちらをご覧ください(参考記事:自主トレが定着するのはどうしたらよいか?)。

自主トレとアドヒアランスとの関連

アドヒアランスとは、患者が“自らの意思で遵守する”という概念のことです。自主トレの定着には重要な概念だと思われます。
そこで、関わり方によってアドヒアランスに差が出るかを調べた報告によると、自宅での運動プログラムは、電話によるフォローアップの有無にかかわらず運動アドヒアランスに差はなかった、とのこと(参考文献③)。

つまり、自主トレを自らの意思で順守する気持ちは、誰かのフォローアップの有無はあまり関係なかったとのことですが、この辺は個人的には国民性の違いが大きいと思います。
日本人は自らの意思で何かをやるというより、誰かに促されてやる人が多い印象です。

自主トレの効果

自主トレの効果を調べることはなかなか難しいですが、それに関する報告を一つ紹介します。

高齢者の転倒予防を目的とした自主トレの報告ですが、自主トレをしない群と比べるとグループで運動を行った群と自宅で自主トレを行った群は転倒予防、生活の質の向上、バランスの改善に有効である可能性がある、とのこと(参考文献④)。

高齢者は活動性が低いため、自主トレをしない人より何かしら行った人の方が効果が出るのは想像通りですが、面白いのがグループで運動群と自主トレ群共に効果がみられという点です。

おわりに

ここまでお読みいただきありがとうございます。
自主トレはリハビリにとってとても重要なものになりますが、定着していただくのが困難です。
自主トレを定着するためには、目標や目的をしっかりもつことと、効果を体感してもらうことが重要だと思います。

【参考文献】
①山崎雅也ら,第48回理学療法士学術大会抄録
②Emily M Simek et al,2015
③Paul S Jansons   et al,2016
④Jacqueline T Martin et al,2013

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