リハビリテーション関係

肝臓疾患に対するリハビリテーションとは?

肝臓疾患に対してリハビリテーションは必要か?

心臓疾患、呼吸器疾患、腎臓疾患などの内部障害に対するリハビリテーション(運動)の重要性は年々定着してきていると思われます。
しかし、臨床では肝臓疾患も多く目の当たりにするため上記の疾患と同様に運動は必要と感じながらも、どのような運動をしていいか迷うことがあります。
この記事では、肝臓に関する知識から、運動(リハビリテーション)に関する内容を簡単にまとめたいと思います。

肝臓の役割と特徴

肝臓は人体で最も大きい臓器で、代謝の中心的存在です。重さは成人男性で約1~1.5kgあると言われています。
役割としては以下のものとなります。

1.タンパクの合成、栄養の貯蔵
2.有害物質の解毒、分解
3.胆汁の合成、分泌
大塚製薬HPより

次に肝臓の特徴について。

沈黙の臓器と言われ、肝臓に障害が起こっても中々症状が現れない。
再生能力が高く、70%切除しても元の大きさに戻る(参考サイト)。
・肝疾患になるとサルコペニアになりやすい(参考サイト)。

※サルコペニアとは、加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下のことです。

肝臓の疾患

次に肝臓の代表的な疾患について。主に以下のものが挙げられます。

・肝炎:ウイルス性、アルコール性、肥満などで起こります。
・肝硬変:肝炎が繰り返させると肝細胞が少なくなり硬くなる病気。
・肝がん:肝臓に発生するがん。

細かい機序はさておき、肝硬変になるとサルコペニアになりやすいと言われています。また、サルコペニア状態にある患者は,肝硬変、肝がん、肝がん切除後および生体肝移植後の予後が不良と言われているため、運動の必要性があると思われます。

肝疾患の原因は、主に以下の5つだと考えられます。

・ウイルス性(A型、B型、C型)
・自己免疫性
・薬剤性
・アルコール性
・生活習慣性(脂肪の摂りすぎ)

原因として、ウイルス性、自己免疫性、薬剤性は仕方ない面がありますが、アルコール性と生活習慣性は予防可能です。

肝臓リハビリテーション

水田の報告によると、嫌気性閾値(AT)の運動強度を基準に週140 分を目標としてステップ台昇降運動を自宅で12 カ月間行ってもらった結果、AT を表す乳酸閾値は対象者全例で上昇し、さらに平均血糖の指標である糖化アルブミンは有意に低下していたとのことです。
つまり、運動が健常者と同様に有酸素運動能が向上させ、さらに糖代謝異常が改善する述べています。

注意点

・肝硬変は低アルブミン血症や蛋白不耐の病態であり、運動により蛋白異化を助長する可能性があるため 分岐鎖アミノの補充は必要不可欠であると述べられています。負荷量には注意しないといけませんね。

食道静脈瘤を認める場合には、運動負荷により静脈瘤が破裂する危険性があるので、息こらえや血圧上昇を伴う負荷の高い運動には注意が必要です。

肝不全時には凝固・線溶系が不安定な状況に陥っており、DIC(播種性血管内凝固症候群)に進展し易いので、運動時の脱水症状に注意が必要です。

おわりに

肝臓疾患に限りませんが、動かないと廃用症候群(関節拘縮、筋力低下、自律神経機能低下など)が起こりますので、運動療法は必要かと思われます。
ただし、注意点を頭にいれつつ行っていく必要があります。
また、生活習慣性の肝臓疾患にならないように予防可能なものは予防も行っていくのが良いですね。

正直まだ肝臓リハビリテーションに関しては確立されていない面が多いです。
肝臓疾患の重症度によって運動は控えた方が良いいケースもあるので、介入時は医師と相談しながら進めていく必要がありますね。
また、当たり前ですが、薬剤、食事からのアプローチも重要になりますので、チーム連携が必要になりますね。

【参考文献】
・水田敏彦,慢性肝疾患のリハビリテーション,Jpn J Rehabil Med 2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/53/11/53_839/_pdf

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