▮はじめに
骨盤矯正というワードが近年一般化してきており、インターネットや街中の整体院などでよくみかけると思います。
この記事では、骨盤矯正とはどういう意味なのかについて、筆者の視点から説明していきます。
【記事の要約】 ・骨盤の関節はほぼ動かないが僅かに動く。たわむ感じ。 ・身体の中心部分にくる骨盤の役割は大きい。 ・骨盤には全身の筋肉がたくさん付着している。 ・骨盤矯正は股関節・腰椎、骨盤周囲筋の緊張バランスを変えることである。
▮骨盤矯正とは?
骨盤矯正について書く前に、まずは骨盤の特徴から説明していきます。
結論だけ知りたい人は後半から読んでください!
<骨盤とは?>
まずは、骨盤とは何か?というところから説明していきます。
骨盤は、寛骨と仙骨からなる部位と差し、仙腸関節と恥骨結合でこれらの骨はつながっています。
ちなみに寛骨は「寛い(ひろい)骨」の意味。
仙腸関節と恥骨結合はわずかですが動きます。
仙腸関節は強靭な靭帯が多く存在することから、動く量はほんのわずかなので、この関節を動かないという人もいます。
よって、動くというか「たわむ」というイメージのほうがいいかもしれません。
※赤丸:恥骨結合/黄丸:仙腸関節
<骨盤の特徴>
次に骨盤の特徴について説明していきます(私見)。
①関節の動きが少ない ②靭帯が多いため受容体が豊富 ③両下肢の体重と上半身の重さを受ける部位 ④付着する筋肉が多い ⑤男女で形が違う
①関節の動きが少ない
骨盤の関節は大きく動く関節ではありません。前述したとおり「たわむ」程度です。
しかし、このたわみが重要だったりします。
仙骨と寛骨のたわむ方向によって、関節が締まる場合と関節が緩む場合があると言われています(参考記事:痛みの治療に有効な「仙腸関節」の見方)。
※仙骨前傾-寛骨後傾=締まる
②靭帯が多いため受容体が豊富
靭帯には受容体(TypeⅠ~Ⅳ)があります。受容体とは感覚情報を脳に送る元になるもので4つのタイプがあると言われています。
受容体の難しい話は置いておき、骨盤にかかるストレスの情報は脳に送られていると思ってもらえれば良いです。
③両下肢の体重と上半身の重さを受ける部位
立っているときは、両下肢に伝わる床からの力が股関節を経由して骨盤に集中します。
よって、骨盤の傾きがあると、床からの力に左右差が生じます。
骨盤は両股関節と腰椎~胸椎とセットで動きますので、骨盤を見るときは骨盤だけをみるのではなく、全体でみるのが良いです。
④付着する筋肉が多い
上半身、下半身ともに骨盤に付着している筋肉は多々あります。
よって、筋肉の緊張状態によって骨盤にかかるストレスが変わってきます
筋肉からそのまま靭帯につながるものも存在し、ハムストリングスの延長上に仙結節靱帯、大殿筋・梨状筋の走行に仙腸靱帯がつながっています。
⑤男女で形が違う
これはリンクの記事を見ていただけるとわかりますが、男性は縦長、女性は横長という特徴があります(参考記事:女性の身体の特徴を考慮してセラピーしよう)。
<骨盤アライメントの見方>
次に骨盤の見方を説明します。結論から言うと、骨盤の見方はかなり複雑です。それが伝えれば良いと思い書きます(笑)。
▮矢状面からの骨盤の見方
矢状面からの見方は割とシンプルです。
・ASISと恥骨が直上が中間位
この定義はわかりやすいですが、万人に通じない印象があります。
・仙骨底が40度が中間位
仙骨底とは、仙骨の上側で第5腰椎と接している面です。
この定義は外から見えないので一見わかりにくいですが、仙骨の上側を触って傾きを見ることである程度の指標になります(参考文献→https://www.jstage.jst.go.jp/a
※仙骨底は第5腰椎と接している面。
▮3次元にみる骨盤の見方
骨盤において一側の寛骨が仙腸関節において偏移し前後傾する状態を「骨盤偏移」といいますが、このパターンを調べた報告があります。
高崎らの報告(★)によると、ASIS、PSIS、恥骨を指標にした場合、12パターンあると述べられています。
※赤丸:PSIS/黄丸:ASIS/水色丸:恥骨
個人的には骨盤偏移というと大きく動いている印象を与えますが、骨盤にかかるストレス方向という認識の方が良いと考えています。
とにかくここから言えるのは、骨盤にかかるストレスはたくさんあるということです。
▮骨盤運動とはほぼ股関節運動である
骨盤を動かす運動は、ほぼ股関節が動いています。
あとは腰椎~胸椎です。
よって、繰り返しになりますが、骨盤を見る時は股関節と腰椎はセットになります。
これらの部位のパターンも加えると骨盤のストレスパターンはかなり多いことが予想できますね。
<骨盤矯正に関する私見>
この記事の序盤に書きましたが、骨盤は大きくは動きませんがたわみます。
よって、骨盤周囲の筋肉の緊張バランスを整えることで、骨盤にかかるストレスを変えることはできます。
前述したように骨盤にかかるストレスパターンはたくさんあるので、そのパターンを全て覚えるのは現実的ではありません。
よって、筋肉の緊張バランスを整えることで結果的に骨盤へのストレスが軽減されるということで良いと考えています。
最後に、骨盤の動きが大きくなる場合があります。
出産前にリラキシンというホルモンが分泌されますが、このホルモンが分泌されると靭帯が緩くなります。
よって、産前産後の骨盤矯正というのが存在します。
産前は骨盤の関節が動きやすくなっているので、ベルトなどで締めると動きが制限されるので、それにより腰痛が楽になる場合があります。
▮おわりに
以上、骨盤矯正の記事になります。
まとめると、骨盤矯正は股関節・腰椎や骨盤周囲筋を整えることで骨盤にかかるストレスを変えることだと考えています。
また、骨盤の状態を把握するのはかなり複雑だということが伝われば良いです。
セラピーの考えはそれぞれなので、骨盤矯正をしているサロンにも各々の考えがあると思いますので、それを否定するものではありません。
この記事はあくまで筆者の私見になりますが、ご参考いただければ幸いです。
※筆者の整体サロン→https://www.reha-me.com/