▮はじめに
脳卒中のリハビリテーションは年々、様々な見解が出てきています。その一つとして、運動イメージの有効性を示す報告がいくつか出ています。
この記事では、運動イメージを取り上げて、脳卒中のリハビリに効果的かどうかについて文献的解釈と私見を書いていきたいと思います。
【要約】 ・運動イメージは1人称イメージと3人称イメージがある。 ・一般的には1人称イメージの方が運動スキルは上がりやすい。 ・脳卒中に対する運動イメージは効果的でないというレビューがある。
▮脳卒中に運動イメージは有効か?
メンタルリハーサルという用語がありますが、これはスポーツ選手がよく使うものですが、状況イメージと運動イメージを合わせたものになります。
メンタルリハーサルは、スポーツ選手が行うとパフォーマンスがアップすると言われていますが、今回取り上げるのは状況イメージは除いた運動のイメージのみなります。
▮運動イメージ中に活動する脳の部位
運動イメージは、実際に運動した時と似たような脳活動があると言われていますが、運動前野、頭頂連合野、被殻、小脳が活動すると言われています。しかし、運動イメージ中の脳の活動部位には様々研究報告があり、各々微妙に異なるので、必ずではないと思われます。
※被殻は大脳基底核という脳の奥にあります。
▮運動イメージの説明
次に運動イメージの言葉の説明をします。
・1人称イメージ:自分が行っているかのような運動イメージであり、筋感覚的イメージとも呼ばれる。 ・3人称イメージ:他者が行っているのを見ているかのような運動イメージであり、視覚的運動イメージとも呼ばれる。 (参考文献)
上記のように1人称イメージと3人称イメージがありますが、各々で脳の働く部位が異なると言われています。
相手の動き見て模倣する方法は、主に3人称イメージを使っており、以前の自分の経験を思い出している時は1人称イメージを使っています。
一般的にイメージにより運動スキルを獲得するためには、筋感覚的運動イメージもしくは一人称的イメージを行った方が、視覚的運動イメージを行うよりも有用であると考えられています(参考文献)。
▮運動イメージの研究報告をまとめたもの
脳卒中後の個人の回復における運動イメージの有効性に関連する文献を評価するために、系統的レビューとメタ分析を実施したものがあります(参考文献)。
これによると、ほとんどの研究は運動イメージの利点を述べているが、それらの論文の質は低いとのこと。
そして、質の高い運動イメージの研究を集めて分析すると、脳卒中に対する運動イメージによる効果はあるとは言えないとのことです。
▮私見
ここからは私見ですが、脳卒中になると運動イメージで活動する脳の部位(運動前野、頭頂連合野、被殻、小脳)にほとんどの人に問題があります。よって、運動イメージを行うのが困難な印象があります。
ちなみにパーキンソン病、小脳疾患の人も同様で、適切な運動イメージを行うのは困難な印象です。
よって、私の経験では運動イメージからアプローチするより、身体からアプローチ(ストレッチ、運動、動作誘導など)した方が効果が出ています。身体が変わってくるとイメージができてくる気がします。
もちろん、運動イメージで良くなる人もいると思うので、そういう人には利用すれば良いとは思います。
個人的には運動イメージはスポーツ選手や、脳疾患でない方の方が効果的かと考えています。
参考までに。
※執筆者のサロン➔https://www.reha-me.com/
<参考文献>
・牧野均・生駒一憲:一人称イメージと三人称イメージでの運動イメージ課題を用いた場合の脳活動の比較研究
・K Richard Ridderinkhof How Kinesthetic Motor Imagery Works: A Predictive-Processing Theory of Visualization in Sports and Motor Expertise.J Physiol Paris.2015
・水口暢章ら:運動イメージと運動パフォーマンス.計測と制御 第 56 巻 第 8 号 2017 年 8 月号
・Zaqueline Fernandes Guerra:Motor Imagery Training After Stroke: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials.J Neurol Phys Ther.2017