治療関係

歩行速度を考える/リハビリ、トレーナー必見!



歩く速度(以下、歩行速度)について考えたことはありますか?
リハビリテーションを行う上で、歩行速度で身体の能力を予測することができると言われています。
歩行の訓練を進めていく中で安定性を求めるのは勿論ですが、速度を高めるという介入も生活の中では重要になります。
この記事では、歩行速度についての見解や歩行速度の高め方について述べたいと思います!

【記事の要約】
1.歩行速度は年齢や男女で異なる
2.歩行速度は身体能力の指標となる
3.歩行速度に関与する要因は歩幅が大きい
4.歩幅は股関節の伸展角度と足関節背屈角度が必要
5.歩行速度に関わるものは身体、精神、着衣物、環境など様々です

▬ 歩行速度はどのくらい?
歩行速度は下表のように年齢や男女によって異なります(文献①)。

上記の表を参考にすると、30代辺りがピークで、年齢と共に低下する傾向にあり、人が快適と感じる歩行速度は、3.5〜 5km/h と言われております(文献②)。勿論、個別性はありますのであくまで参考値です。

ちなみに、不動産で徒歩○○分と記載されているものは、分速80m(時速4.8km)で記載されているものが多いそうです。

▬ 歩行速度と身体活動の関連

脳卒中患者における歩行速度と身体活動の関連は下表のように言われています(文献③)。

この報告の対象者は脳卒中後遺症なので、歩行速度が2.88km/hは前項の速度と比べるとだいぶ遅い結果ですが、とても参考になるものだと思います。

一般的には歩行速度が遅い人の方が転倒する可能性が高いと言われていますので、ゆっくり歩くのが安全とは限りません。
専門用語を使うと、慣性力(加速度の反対側に働く力)を利用した歩行の方が安定性が高く疲れにくいです。
つまり、歩行速度が遅い人は安定性が低く疲れやすいことが予測できます

▬ 歩行速度に関与するものとは?

▧ 歩幅
歩行速度は歩幅と関連があると言われています(文献④)。つまり、歩行速度が速い人は歩幅が広いということです。

上図では上の方が歩幅広い為、歩行速度が速いことが予測できます。
しかし、人によっては歩幅が狭くても歩行率(足を交互に出す速さ)が速い人がいますので、一概には言えません。

▧ 重心動揺距離
健常男性高齢者を対象とした研究ですが、重心動揺距離と負の相関がみられたという報告があります(文献⑤)。つまり、重心動揺が小さいほど速度が速いということです。
下図は横から見たもの(矢状面)ですが、重心は上下にわずかに移動する(4.5~5㎝)のが一般的です。立脚中期で重心が高くなり、踵が床に接地するときに重心が低くなります。

歩幅が拡がると一般的には上下の重心移動は大きくなる為、この報告とは一致しません!しかし、あまりに重心動揺が大きいのは不安定性を意味する為、付随して歩行速度も遅くなると言えます。

また、左右方向(水平面)でもわずかに重心が移動(3㎝くらい)します。

これも上下方向と同様で、あまりに重心動揺が大きいのは不安定性を意味しますので、歩行速度は遅くなると言えます。

▧ 下肢の筋力低下
高齢女性を対象にしたもので、歩行速度低下の主原因は下肢の筋力低下という報告もあります(文献⑥)。下肢の筋力と歩行の関連では、下腿三頭筋に関する報告が多くあります。
つまり、下腿三頭筋の筋力がある人程、歩行速度が速いということです。

▬ 歩幅を広げる為にはどうすればよい?

上の図のように歩幅を広げる為には、股関節伸展足関節背屈の可動域が必要になります。

前項で述べたように下腿三頭筋の筋力が発揮される為には、足関節背屈の可動域が必要になります。
また、歩幅を広げる為には、股関節の伸展の可動域が必要になりますので、これらの部位の柔軟性を高めることが歩行速度を上げる為に必要と考えられます。

若年者および高齢者に種々の速度で歩行させた結果、歩行速度の増大にしたがって股関節の可動域および筋活動量が増加したという報告もあります(文献⑦)。
つまり、歩行速度増大には股関節の可動域や筋力が必要と言えます。

▬ 歩行速度に関わる身体的要因以外のもの

歩行速度の平均値はあくまで平均値なので、これより遅い人がダメということではありません。
そのような人は、何かしらの身体的な要因があると考えられます。単純に足の長さでも変わってくると思います。
また、身体面だけでなく精神的な要因があるのかもしれません!
身体心理学という分野では、落ち込んでいると歩幅が小さくなり、気分がいいと歩幅が拡がる、とも言われています。
さらに、服装の影響もあります。窮屈なズボンを履いている、オムツを着用している、固い靴を履いている、などの条件があると歩行速度に影響が出ます。
そして、狭い環境では歩幅が小さくなる、広い環境では歩幅が大きくなる、といった環境面も無視できません。

【歩行速度に影響する因子】
●身体的要因
●心理的要因
●着衣物要因
●環境的要因

以上です。参考になれば幸いです。

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【参考図書】

【参考文献】
①山崎昌廣ら.ヒトの歩行.J. Anthrop. Soc. Nippon人類 誌.98(4):385-401(1990)

②安藤正志ら.異なる歩行速度 が快適歩行におよぼす影響.理 学療法学 1995, 第22巻第 1号 10〜 13頁
③Perry J.et al.Classification of walking handicap in the stroke population. 1995 Jun;26(6):982-9.
④関屋 舜ら.正 常歩行における歩行速度、歩行率 、歩幅の相互関係.理学療法学 1994.第21 巻 学会 特別号 (第29 回青森 )
⑤伊東元ら.健常老年者における最大歩行速度低下の 決定因.理学療法学 1990, 第 17巻第 2 号 123〜 125頁
⑥KOHJITAINAKA.FITNESS-RELATED FACTORS ASSOCIATED WITH CHANGES IN WALKING SPEED IN ELDERLY WOMEN.2002 Volume 51 Issue 2 Pages 245-251
⑦Crowinshield RD ,Brand RA ,JohnstonRC .The effectof walking velocity and age 〔>n hip kinematicsand ki−netics .ClinicalOrthopaedics and Related Research132:140− 144,1978



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