肩こりは男性の訴えの2位、女性の訴えの1位を占めているくらい多くの人が悩んでいるものです。
肩こりの原因は生活習慣、姿勢、筋肉量、内部疾患など色々ありますが、固くなる筋肉はある程度決まっています。
その硬くなる筋肉の代表例が僧帽筋です。この記事では、僧帽筋の特徴について解説し、肩こりへのアプローチのヒントを述べていきます。
▮僧帽筋について
皆さん一度は聞いたことある筋肉かもしれません。
下の写真のように首〜肩甲骨〜胸椎の表面にある大きな筋肉で上部、中部、下部と分けられます。
頚部の運動、肩甲骨、肩の運動に関与している筋肉です。
※Visual anatomy アプリより
肩こりで凝りやすい筋肉として有名です(特に上部線維)。
この僧帽筋が肩こりになりやすい見解の一つとして、姿勢の影響が考えられますが、今回は姿勢以外の因子の話をします。
▮僧帽筋の血管
一般的に動脈と静脈は伴走しています。
僧帽筋の動脈静脈は上部線維と中部線維に集中しており、動脈と静脈は多くの部位で伴走しています。
しかし、中部線維腱鏡下部と上部線維肩峰部の静脈は動脈と伴走しない、と言われています。
また、僧帽筋の静脈の分岐の数は多く、血管の直径も末梢の方が近位血管より太い形態が特徴だそうです。
つまり、静脈血が滞りやすい要因となります。
そして、僧帽筋の静脈は弁がないそうです。ちなみに大胸筋、広背筋、大殿筋では弁はあるそうです。
これも、静脈血が滞りやすい要因となります。
<僧帽筋を走行する静脈についての特徴> ① 動脈に伴走しない(全てではない) ② 分岐が多く、末梢血管が近位血管より太い ③ 静脈弁が欠落
▮僧帽筋の血管を踏まえてアプローチ
静脈弁がないこと、末梢血管が近位血管より太く分岐が多いことから僧帽筋内はうっ血しやすいと言えます。
つまり、血行不良となりやすく、筋肉が硬くなりやすい(筋硬結ができやすい)と考えられます。
流れを促す為に筋肉の収縮弛緩を繰り返すと良いと思いますが、筋線維と静脈が直交や斜めに交差する場合、筋収縮が静脈に伝わりにくいそうです。
文献によると、外椎骨静脈叢へ流れを促すアプローチが良い、と書いてありました。
また、文献によると下大静脈を通る静脈還流は腹圧や胸腔内圧の影響を受けやすいそうなので、内圧を高めるようなアプローチも良いかもしれません。
さらに奥野先生の書籍によると、長期間の痛みの部位は「モヤモヤ血管」といい、異常な毛細血管が増殖しており、その部位に血液が溜まってしまうそうです。
そのモヤモヤ血管を押圧で押しつぶし、血管をなくすことで血液の滞りを解消することができるかもしれません。
僧帽筋のコリへの血管アプローチをまとめると、 1.頸椎に向かって、さするようなマッサージ 2.内圧を高める運動や姿勢 3.痛みの部位への押圧刺激 となります。
以上、僧帽筋の血管の話でした。
肩こりで困っている人が硬くなりやすい僧帽筋に対するアプローチのヒントにしていただければ幸いです。
宜しければご参考下さい。
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<参考文献>
・臨整外・42 巻 5 号・2007 年 5 月
・長引く痛みを治したいなら「モヤモヤ血管」を押しなさい 奥野祐次著