今後デイサービスを立ち上げようと考えている人に向けての記事になります。
【記事の要約】 ・デイサービス開設の為には、基準が設けられているので介護保険法の基礎の部分は理解しましょう ・開設までは、「物件決定➔スタッフ決定➔物品(送迎車など)用意➔申請➔OPEN準備」です。 ・必要書類を把握しておきましょう ・申請は一度で通らない為、早めに動きましょう! ・初めは、営業、契約、運営などで大変ですが、軌道に乗るまでは辛抱です。
介護保険法をなんとなく理解しよう
通所介護は介護保険法に基づいて運営する必要がある為、細かい内容はさておき介護保険についての知識は最低限は知っていた方が良いです。
介護保険のサービスは、40歳以上の国民から介護保険料を徴収し、必要な人が利用できる制度です。利用するためには区市町村から介護保険証が発行させなければなりません。元気な人は認定がおりないので介護保険サービスを利用することはできません。
介護保険の級は7段階(要支援1<要支援2<要介護1<要介護2<要介護3<要介護4<要介護5)になっており、要介護5はかなり介護が必要な状態と判定され、要支援1,2は介護はそれ程必要ではないが、多少の支援は必要という判断になります。
介護保険は3年に1度、見直しが行われることになっています。よって、変わりづつける法律なので、法律にアンテナを立てておく必要があります。また、事業所に対してしっかりと運営ができているかを都道府県・区市町村が定期的にチェックする為に実地指導という制度があります。実地指導で怪しいと判断された事業所や、指導しても改善がみられない事業書には監査が入り、最悪の場合は指定取り消し処分となることもあります。
あくまで保険サービスなので、目的に沿わない使われ方がされていないかをチェックするのは当たり前ですね。
ちなみに介護保険サービスを利用したいと思ったらまずは区市町村に問い合わせましょう。すると、包括支援センターを紹介してもらえます。そこから居宅介護支援事業所(ケアマネージャー事務所)を紹介してくれたりして、どのようなサービスがあるかを相談してくれたり、実際にサービス導入手続きなどを手伝ってくれます。
通所介護施設とは、、、
自宅から外出することが困難な人に対して、運動機能の維持向上、社会参加の促し(引きこもり防止)、介護者の負担軽減などを目的とした送迎サービスがセットでついている介護保険サービスです。
施設の規模や、やることはある程度各事業所毎に特色を出すことができますが、通所介護施設の決まり事として、設備基準、運営基準、人員基準があります。各々は後の項で説明します。
運営時間に関しては半日(約3時間)か1日(7時間)の箇所が多いです。1日の事業所は入浴サービス、昼食サービスがついていることが多いです。半日の事業所は運動メインのところが多いですが、中にはカジノ、温泉、マッサージ、麻雀、パソコンなどを売りにしている事業所もあります。
立ち上げまでの手順を簡単にいうと、
1.物件を決める
2.オープニングスタッフを集める
3.自動車・備品を購入orリースし、中身(システム)を決める
4.法人を設立して、介護保険認定施設の申請をして都道府県or区市町村の許可をとる
5.パンフレット等を作成し、近隣のケアマネージャー、包括支援センターに営業して新規利用者を集める
という流れです。各々の項で注意点がある為、各項毎に説明をしていきます。
1.物件を決める
まずは物件が決まらないと申請が通りませんのでこれが先決です。1人の利用者に対して3㎡の機能訓練面積が必要なので、15人定員を目指すのであれば運動するスペースが45㎡必要になります。それとプラスで、手すり付のトイレ、ベッド(静養する場所)、面談室、事務室、カルテ棚のスペースが必要になります。申請には関係ありませんが、スタッフの休憩所などを確保している事業所もありますので、割と広い物件が必要になります。都内では広い物件は高額で、割に合わないことから敬遠されがちです。
物件を決める際に運営を考えると、コンセントの位置、水回りの位置などが大事ですが、施設基準を考えると、出入口開口部の広さ、トイレ開口部の広さ、非常灯の有無が大事になります。また、駐車場を近隣に確保できない場合は通所介護の物件としてはいまいちかもしれません。
また、意外と大事なのは、100㎡以上の施設は用途変更をしないといけません。また、消防署に連絡して避難経路、消化器、非常灯の確認なども行わないといけません。
2.オープニングスタッフを集める
申請時に人員基準がありますので、少なくても管理者(資格問わず)、生活相談員、機能訓練指導員、介護スタッフ(資格問わず)は必要になりますが、兼務が可能なので定員10名以下であれば最少3名で申請可能です。
例えば、管理者兼介護スタッフ、生活相談員、機能訓練指導員などです。ちなみに、定員11名以上になると看護師を配置しないといけないので、少しハードルが上がります。
また、15名を超える定員になると介護士の増員(16~20名は1名、21名~25名は2名など)が必要になります。
オープニングは利用者さんが少ないため、週5回運営することが少ないと思います。
スタッフを全員正社員にすると人員コストが高い為、パートさんを採用している場所が多いです。管理者と介護スタッフ以外はパートで可能です。
生活相談員は自治体によって要件が変わりますので申請する自治体に確認するしかありませんが、4年生大学を卒業している方の多くは要件を満たしています。
また、介護福祉士の資格を持っている方、社会福祉士の資格を持っている方も要件を満たしているいることが多いです。
給料に関しては、介護スタッフの正社員の相場は18~21万です(平成30年現在)。管理者では27万程度でしょうかね。しかし相場にまどわされず欲しい人材には高値を提示するのが良いと思います。
3.自動車、備品の用意、システム構築
通所介護は送迎がセットのため、自動車を用意しないといけません。立ち上げ時は中古車や自家用車を利用している人が多いようです。最近ではカーシェアなどを利用している場所もあります。
備品はたくさんありますが、少なくても、複合機、電話、パソコン、カルテ棚、定員分の椅子、テーブル、荷物置き場、洋服かけ、ポット、掃除関係グッズは最低限必要になるでしょう。かなり経費がかさむのは最初は覚悟しておいた方が良いです。
システム構築で悩むのは、利用時間(3時間、7時間など)の過ごし方です。
例えば、送迎後、バイタルサイン確認➔全員で準備体操➔運動➔口腔体操➔リラクゼーションタイム➔運動➔お茶タイム➔整理体操➔送迎、などの流れを決めたり、運営に必要な書類の書式準備などがあります。
ここは運営しながら改善していくところですが、時間があるのならば、いくつか通所介護施設を見学することをお勧めします。たくさん見れば見るほど良いと思います。
【最低限必要書類】 ・契約書、重要事項説明書、個人情報利用同意書 ・通所介護計画書 ・実施記録票 ・個別機能訓練計画書 ・送迎記録票 ・利用者カルテの基本情報
4.法人設立、申請
すでに医療法人、一般社団法人、NPO法人をもっていればよいですが、持っていなければ株式会社か合同会社を設立して通所介護施設を立ち上げる人が多いです。
申請は定員によって場所が異なります。定員18名以下では区市町村で、19名以上では都道府県となります。また、19名以上でも要支援認定の方を受け入れるのであれば、「総合事業」として申請することになるため、要介護者は都道府県、要支援者は区市町村に申請するということになります。
※注意点!隣接の市町村の利用者さんもターゲットにしている時、地域密着型サービス(定員18名以内)ではその市町村への届け出も必要になります!
東京都の方は東京都福祉保健局のホームページに詳しく書いてありますので、それをご参考下さい。
かなり大量の書類となりますので早めに準備しておくことをお勧めします。1,2が済んでいないと、物件情報、雇用契約書、資格証のコピー、車検証、就業規則、法人情報などの書類が提出できません。
とにかく申請は一回で通ることはほぼないと思います。何度も通って書類を確認してもらうことになります。申請はOPENしたい月の2か月前の末日までとなっておりますので、逆算して申請準備をしましょう(12月1日OPENしたいなら、10月31日までに書類が全て準備できてOKをもらわないといけません)。
5.パンフレット等を作成し、近隣のケアマネージャー、包括支援センターに営業して新規利用者を集める
パンフレットは自作でも良いですが、オープニングは業者に依頼していい紙で作ることをお勧めします。また、ホームページがない通所介護施設が多いですが、最近は利用者の家族やケアマネージャーもホームページをチェックするため、ホームページもあった方が良いです。
営業は居宅介護支援事業所(ケアマネージャー事務所)と包括支援センターは必須ですね。また、訪問看護ステーションや訪問ヘルパーステーションからの紹介もたまにあるので時間があれば、そこを押さえておきたいところです。
ちなみに直接あいさつに行くのが良いと思われがちですが、私は郵送することをお勧めします。なぜならばケアマネージャーさんは事務所にいないことが多いのと、営業に対応することが多いため、嫌がれることが多い為です。しかし、通所施設の半径1km圏内は郵送だけでなく直接営業が良いと思います。これは通所介護は近隣からの紹介が最も多いためです。
立ち上げ前は、展示会、プレオープンイベント等を行うと良いですね。オープン前後はとにかく新規利用者を集めことが大事なので、営業や契約関係で管理者や生活相談員は忙しくなります。
軌道に乗るまでは早くても半年から1年かかる為、先行投資した額を回収するのには何年もかかります。また、介護保険は2か月後に自治体から振り込まれる為、当初は資金繰りが大変になりますので、余裕をもって融資を受けておくとよいでしょう。
しかし、それを救ってくれるサービスとして、翌月にお金を振り込んでくれるサービス(リコーリースなど)や、開業支援してくれるサービス(カイポケなど)などが最近はありますので、それらを利用することも良いと思います。